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コンサルファームトップ対談 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 代表 榊巻 亮氏 ~コンサルティング会社としての組織・ヒトに対するこだわり~

コンサルファームトップ対談 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 代表 榊巻 亮氏 ~コンサルティング会社としての組織・ヒトに対するこだわり~

共通するコンサル業界への課題感とクライアントへの想い

3.12%を超えないという自社成長に対する考え方

大谷内:
成長や拡大というトピックについて話してきましたが、もう少し具体的に御社の成長に対する考えについてお聞かせ下さい。「経営方針書(Principle)」では、Organic growth(自然な成長)を掲げ、年に12%を超える成長をしないと明示していらっしゃいますが、規模拡大ありきではなく良質な社員と良質なクライアントとともに仕事したいとの考えからなのでしょうか?

榊巻:弊社にとって規模は成長ではなく、規模は結果であると考えていて、成長とは新しい能力を個人も組織も獲得し、それによりケイパビリティが高まる、そしてクライアントに提供できる価値が高まる、それがつまり我々の成長であるという考え方をしています。その考えがあるから規模を追いませんし、歯止めのためにも12%成長としています。急拡大をしてしまうとカルチャーが薄まってしまうこともあり、その点でも12%としています。

大谷内:
これまでのお話を通して、風土も仕組みも大分できあがっている上に、何より経営陣以外にもカルチャーを伝播できる社員が増えており、12%以上の成長土俵はできていると思うのですが、12%以上の成長を目指さないのでしょうか?

榊巻:
おっしゃる通り、以前より格段に文化やワークスタイルを伝播する力がついています。例えば、採用の前段で、ケンブリッジの内情やカルチャーを伝える130ページのパワポコンテンツを新たに作成し、採用候補の方はかなりの確率で読んでくれています。 また採用した社員に対する「育成力」も上がってきている実感があります。そうした背景もあり、12%を超える形で社員を採用するのもありかなと思い始めています。

あと、採用に限らず、考えや仕事のスタイルが合うフリーランスのコンサルタントの方とのつながりを増やしてクライアントへ価値提供できる幅を広げていきたいとも考えています。ただ、フリーの方と一緒に仕事をする社員の帰属意識のことを考えると、フリーの方も優秀なら誰でも良いわけではなく、ケンブリッジと本当に合う方かどうかは慎重に見ています。

大谷内:
弊社はフリーランスと積極的に仕事をしており、社員もフリーランスも楽しく仕事をできる環境を意識しています。 満足度に近しいですが、御社は「働きがいのある会社」ランキングに毎年ランクインしていらっしゃいますよね?

榊巻:
はい、働きがいのある会社研究所がおこなっている“働きがいのある会社”サーベイにエントリーしていて、毎年ベストカンパニーに選ばれているのは確かですね。ただ、あの結果や評価項目に囚われ過ぎるべきではないと考えています。選ばれることが目的となってしまわないよう、目の前の社員一人ひとりと対話し、生の声を元に必要なことをやっていくことも大切なのではないかと思っています。

大谷内:
一人ひとりに向き合い、多様性も尊重して、良い経営をなさっていると思います。 成長というところに話を戻しますが、株主のBIPROGYから売上や利益などの「数字」に関して強い要求を受けることはないですか?

榊巻:
親会社とは対等なパートナーとして良い関係ができていて、独立路線を良しとしてくれています。数字に関しては株主なのでもちろん一定の利益などは必達になりますが、無茶な数字を求められることはなく、対等にやり取りをして、お互いに学べることは学んでいきましょうという素晴らしい関係ができていますね。 案件についても親会社に頼ることはまったくなく、我々のみでビジネスが十分に回るようになっています。

大谷内:
リセッションの懸念も高まってきている状況にありますが、あまり影響はなさそうですね?

榊巻:
もちろん景気に左右される部分はあるでしょうけど、むしろ採用市場の状況が変わることによってケンブリッジに合った人材を採用しやすくなるだろうと考えています。そもそも景気によって左右されない経営を実現したいと思っていますので、採用を絞ることも考えていません。多様性があり能力のある方がケンブリッジに参加してくださることで組織のケイパビリティは確実に伸ばせると考えています。

4.コンサルタントとクライアントに期待する考察力の育成

大谷内:
こうしていきたいと考えている会社の環境や社員へ与える機会などについてお伺いしたいと思います。 コダワリの場合は楽しんで仕事できる環境や、社員に自己選択を促す環境というのを模索しているところです。自己選択をすることで自己責任、オーナーシップの考えをいかに持たせるかということを模索しているのですが、榊巻さんはいかがですか?

榊巻:
弊社では、「あなたはどうしたいの?」 「どう思うの?」と常に聞かれる環境なのですが、コダワリさんが模索していることに近しいかもしれません。

2年程前にカルチャーを再編したのですが、その中の項目にOpinionを入れまして、「どう思う?」のキーワードとしてオピニオンモデルというものを掲げたところ、不思議なもので自然と社内で「あなたのオピニオンは?」という言葉が増え、今では常にオピニオンを聞かれる環境となってきました。 カルチャーや会社の考え方を言語化して明文化していくことで、皆が少しだけ変わりはじめ、行動や話すことに変化が出てきます。そうすると、皆の考え方やカルチャーに対する理解が変わっていきました。

大谷内:
社員だけでなく、クライアントにも当てはまることかなと思いますね。考えていただくことが変革への一歩になるのだと思います。

榊巻:
変革をもたらすプロジェクトの最初から最後までクライアントと一緒にEnd to Endでやり切るというのは、まさしく上述のオピニオンモデルともいえます。我々も全力でオピニオンを出すので、クライアントにもオピニオンを出してもらい徹底的にやり取りをしていきます。クライアントに行動や考え方を変容していってもらい、自分事として意思決定をクライアントにしてほしいと思います。 これまでの事例や知見に基づいた最良であろうという解を持っていても、あえて言わないでディスカッションを行いますが、ディスカッションを通してまったく異なる答えに行きつくことも往々にしてあります。クライアントとのやり取りを通して、2社間で答えを導き出すのが楽しいですし、それが大事なことだと思いますね。

5.最後に、榊巻さんが今後こだわりたいこと

大谷内:
榊巻さんが今後特にこだわりたいことは?

榊巻:
社員の力を最大限引き出せる環境を作ることにはこだわりたいですね。具体的には、行動することに「迷わせない環境」をとことん作りたいと考えています。この「迷わせない環境」とは、社内での立ち振る舞いにおいて悩まなくていい環境のことを指しています。例えば、あの人に言っていいものなのか、社内的にはこうしておくべきではないかなどの忖度における悩みを持たなくていいというものになります。社内では良いものは良いとストレートに言って欲しい、一方でクライアントに対してはどうアプローチすべきか、何と言うべきかなどは大いに悩んでほしいですね。

社員が迷うことなく、生き生きと気持ちよく働けることで、最大限の力を発揮できるようになると思っています。ケンブリッジの優秀な社員が勝手にすごいことをしてくるのではないかと期待しています。私の想像や思っていることを社員が超えていく環境を作ることにこだわりたいですね。

大谷内:
経営者の既存の枠に囚われるなということですよね。

榊巻:
はい、まさしく。上手くまとめて下さいました。

*1 ケンブリッジが会社として意思決定をする際に判断のベースとしている、経営方針/価値観をまとめたもの
https://pages.ctp.co.jp/rs/205-JYV-405/images/Cambridge_Principle.pdf

ベースキャンプをコンセプトにしたオフィスもご案内いただいた。ケンブリッジのカルチャーを感じられるだけでなく、ファシリテーションに最適化されたオフィスとなっている。

■Intervieweeプロフィール
榊巻亮(Sakamaki Ryo)
大学卒業後、大和ハウス工業に入社。業務改革プロジェクトへの参画をきっかけに、ケンブリッジテクノロジーパートナーズへ参画。2021年より現職。一級建築士。書籍執筆もおこなっており、業務改革の教科書(日本経済新聞出版社)や世界で一番やさしい会議の教科書(日経BP社) などがある。

■ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズについて
社名: ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社(Cambridge Technology Partners Limited)
設立: 1997年6月
所在地: 〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-32 赤坂2・14プラザビル4階
従業員数: 183名 (2022年4月現在)
沿革: 1984年マサチューセッツ工科大学の2名の教授がCambridge Technology Group (CTG)を設立。1997年日本法人設立。2006年、日本法人が日本ユニシス(現BIPROGY株式会社)傘下に入り、米国とは資本上の関係がなくなる。2019年、米国に再進出。

編集後記
非常にフランクで話しやすく、1時間半ほどのインタビューもあっという間でした。なにより相手のこと、特に社員のことを考えていると同時に、私に対しても興味関心からくる質問もいただき、相手を知ろうとする姿勢には感銘を覚えました。厚かましくも、互いに高め合う関係を作れそうな印象を受けておりまして、次回は是非お酒を交わしながらゆっくり時間をかけてお話できればと思いました。この度は、貴重なお時間をありがとうございました。

執筆者

大谷内 隆輔
大谷内 隆輔コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。

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