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コンサルファームトップ対談 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ COO 白川 克氏 ~社員が「個人商店」にならないコンサルティングファームにするための仕掛けづくり~
目次
3.バッファチームが、社員が会社のことを自分事と捉えるきっかけになった
大谷内:
先日の榊巻さんとのお話しでも感じましたが、ケンブリッジさんでは全社最適と個別最適がバランスよくできていますね。
白川:
ケンブリッジは他のコンサルティングファームと比較して、ディレクターの「個人商店感」が極めて薄いことも要因の1つかもしれません。自分ひとりでも案件を回せる優秀なコンサルタントがディレクターになり、部下のリソースマネジメントもクライアントへの営業も自身の案件のデリバリも何もかもやってそこから利益を生み出す、という個別最適に振り切ったスタイルはコンサルティングにおけるキャリアの1つの形だと思います。
しかしケンブリッジのディレクターはそうではない。そのスタイルが良い悪いではなく、ただケンブリッジはそのスタイルを好まないだけです。リソースもワンプールですし、ディレクター陣が会社全体を自分事として見ていますので、困っているチームがあったら会社全体でどうすべきか自然とディスカッションが始まるのです。
大谷内:
チームという観点ですと『1チーム分バッファを作る仕組み』について以前ブログで言及されており、とても良い取り組みと思いました。
白川:
全社最適の取り組みと言えるかもしれません。あえてバッファを設けることで、どこかのチームでトラブルが発生したときにすぐ支援に入り特定の社員に負荷が集中しすぎないようにできます。また、それと同じくらい大事なこととして、バッファがあれば会社として経験のないプロジェクトにチャレンジできるという面もあります。悩ましいのは素敵なクライアントに出会うと、バッファを削ってでも一緒に仕事をしたくなり、バッファがいつの間にかなくなってしまうことです(笑) この悩みは永遠に続くのかもしれません。
大谷内:
バッファチームは、待っている間にどのような活動を行っているのでしょうか?
白川:
社内プロジェクトが多いですね。これまでのプロジェクトで得たノウハウや経験を普遍的な方法論に整えるようなナレッジマネジメント関連の活動をしたり、社内システムのBPRをすることもあります。弊社の新規事業に参画してもらうこともあります。
バッファチームのもたらす副次的な効果は非常に高いと感じています。彼らが社内のことに取り組みケンブリッジの経営と業務がより良い方向へ変わっていくことで、クライアント先にいる社員が会社のことを自分事として捉え始めたのです。中には、会社をより良くするための活動を自主的に行うコンサルタントも現れています。
大谷内:
大手ファームでもバッファチームは設けるもののあまりうまく活用できていないと聞きます。ケンブリッジさんのバッファチームは本当に有効に機能していると思いました。バッファがあるとクライアントワークにアサインしたくなってしまい、そこは我慢しなければなりませんが(笑)
4.考えや価値観の浸透には、議論に加えて言語化が極めて重要
大谷内:
これまでのお話、ブログ等を拝読し、育成、クライアント、案件といったさまざまな要素の底にある考えや価値観がきちんと言語化されて会社全体に浸透しているように感じ、素晴らしいと思います。
白川:
たしかに考えや価値観については言語化と浸透ができていると思います。けれども、自然とそうなったわけではなく、常に経営方針や会社のカルチャーに関する議論をして、かつそれを文字情報として言語化しているからこそだと思います。こういうクライアントと仕事したいとか、会社と社員の関係についてなど、ある種フワッとしたこともよく社内で議論していますが、口に出すだけではなく必ず言語化しています。社員数が増えてきて、できることも増えたが、考えを言語化していかないと自然な浸透だけでは限界が出てきたからとも言えますね。
考えの言語化を意識してやるようになったのは4-5年前ですが、思い返せばそのタイミングから『考え方に対する共通基盤』ができ始めたのだと思います。
大谷内:
4-5年前とのことですが、具体的にはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
白川:
きっかけの1つは現オフィスへの移転です。私はまさしく移転プロジェクトをやっており、社員にアンケートをとったところ、皆オフィスについての考えがバラバラだったのです。それまでも口に出して「ケンブリッジのオフィスはどうあるべきか」と積極的に議論していたので、考えは共通化しているだろうと思っていましたが、そうではなかったんだと気づかされました。
我々がクライアントとプロジェクトをする際は、徹底的に議論してその結果も経過も言語化していくのですが、意外と社内ではできていなかったと気づき、議論に加えて言語化をするようになりました。
大谷内:
榊巻さんや白川さんは書籍執筆もされていますし、ブログ等での発信もされていますが、言語化の一環と捉えることもできますか?
白川:
書籍執筆への想いとして、書籍を読んだ社員が頭の中を整理するきっかけになってほしいです。基本的に執筆をする際には第一読者を自社の社員として意識しているくらいです。ケンブリッジの考え方が社員に浸透することで、会社の意思決定や新しい取り組みに対しての理解も進みますし、組織が強くなることにもつながっていきます。
対社外という観点でも、書籍やブログを通じてマーケティングの段階でケンブリッジのファンになっていただく方が多く、長期的に効果が出ています。より多くの方から「今度うちでこんな変革するんですけどケンブリッジさんぜひコンサルティングをお願いします」となって欲しいですね。
5.最後に、白川さんが今後こだわりたいこと
大谷内:
それでは最後になりますが、白川さんが今後こだわりたいことは何でしょうか?
白川:
1つあげるなら「クライアントと我々の関係性」になります。私はこれまで6冊の本を執筆しましたが、1冊目のサブタイトルを「クライアントとコンサルタントの幸福な物語」としました。1つ目の作品に自身が大事にしていることがもっとも表れると言われますが、振り返ればこのサブタイトルに私のこだわりがまさしく表れていると思っています。
私の考えとして、クライアントとの関係において、コンサルタントは先生でも業者でもなく、難しいことを成し遂げる同志や戦友という関係でありたいと思うのです。今、COOという立場に就いていますが、自分が直接関わっていないプロジェクトでもクライアントとの良い関係の構築にはこだわっています。そうすることで売上はあとからついてくると思いますし、何よりプロジェクトに関わる皆が楽しく働けるようになっていき、それが個々人の成長にもつながってくると信じています。
■Intervieweeプロフィール
白川克(Shirakawa Masaru)
プログラマーとしてキャリアをスタート。ケンブリッジに転職後、業務改革、システム構築、ビジョン策定などのプロジェクトを数多く経験。現在は3つの仕事(お客様とのプロジェクト、執筆や方法論構築、COOとして自社の経営)を担当。
主な著書に『システムを作らせる技術』(共著、日本経済新聞出版)、『リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書』(日経BP社)。
■ケンブリッジテクノロジーパートナーズについて
社名: ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社(Cambridge Technology Partners Limited)
設立: 1997年6月
所在地: 〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-32 赤坂2・14プラザビル4階
従業員数: 183名 (2022年4月現在)
沿革: 1984年マサチューセッツ工科大学の2名の教授がCambridge Technology Group (CTG)を設立。1997年日本法人設立。2006年、日本法人が日本ユニシス(現BIPROGY株式会社)傘下に入り、米国とは資本上の関係がなくなる。2019年、米国に再進出。
編集後記
オンライン形式なもののインタビューの間、コンサルティングに対する熱い想いをひしひしと感じました。社員・クライアント・経営者・自己・協力会社・他ファーム等多面的な視点をお持ちで、かつ何事に対しても中長期的に考えておられ、それが故に話の具体性・説得力の高さには感銘を覚えました。社員の方々の考えや価値観の浸透にもつながっているのだと感じ、力強いリーダーシップで私にとっても大いに学びのある良い場となりました。このような機会をいただき、ありがとうございました。
執筆者
- アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。
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