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コンサルのアウトプットの在り方 ~ナレッジが単なる情報漏洩にならないために~

コンサルのアウトプットの在り方 ~ナレッジが単なる情報漏洩にならないために~

コンサルなら知っておきたい、ナレッジアウトプットの流儀

フリーランスの筆者がファームに対して非常に羨ましく思っていることは、ファームには大量のナレッジが集約されていることです。これは、フリーランス一人では到底太刀打ちできない組織が保有する大量のノウハウを基にして、クライアントにサービス提供することができることを意味します。

例えば、以下のような問い合わせがあった場合、社内のナレッジにアクセスすることで簡単に示唆を得て、クライアントへ回答することができます。

✔会計システムを刷新する場合どのようなプロジェクト計画がよいのか
✔複数プロジェクトに投資する場合どのように優先順位付けすればよいのか?
✔エンターテイメント業界のDX像はどのようなものなのか?

ナレッジやノウハウが集約され、汎用化されている状態をベストプラクティスと言います。

言わばこの虎の巻を利用することで、ファームは提案やデリバリー時に「我々は同様のプロジェクトの成功実績もあり、方法論も熟知している。そのため効率よく支援ができる。」とクライアントにアピールすることができるのです。

ところが、ナレッジやノウハウというものはきちんと管理された状態のものを使わなければ、信用を落とすことに繋がります。

今回は、ナレッジに対する考え方をもとに、正社員/フリーランス関係なく、そもそもコンサルタントのアウトプットとはどうあるべきかを振り返ってみたいと思います。

ナレッジ”流用”とナレッジ”利用”は違う

業界では有名な以下のお話を皆さんはご存知かと思います。

ある大手コンサルティングファームが、コンサルティング契約を結んでいる企業のDX戦略に関する資料の一部を、競合他社に提供してしまったというものです。

詳細な内容を把握していませんが、過去のプロジェクトで作成した資料を何もテーラリングせずに使いまわすことを“流用”と呼びます。

日頃の資料作成で皆さんは心あたりないでしょうか?流用したことが原因で偶然にも競合他社名が記述されていたり、計数値が残っていたりすると情報漏洩として信用を落とすことに繋がることは想像に難くないと思います。

ナレッジとしてテンプレートが必要なら、取引先名称や計数値、システム名を残したままにすることは言語道断ですし、パワーポイントのオブジェクトだけ残すこともあまり品のいいことではありません。

過去資料をベースにするとしても、きちんと汎化するとともに、「どのような課題に対して訴求したため、このような構成が必要であった」というような背景も前提として必要になってきます。ナレッジ“利用”できる形でベストプラクティスが整理されていなければなりません。

そもそも流用できるプロジェクトはあるのか?

筆者がファームに新卒入社した時の新人研修で、「コンサルの仕事に全く同じものはない。“プロジェクト”の言葉の定義からしてもそういうものだ」と教わった記憶があります。

あれから15年余りコンサル業界に身を置いていますが、この考え方は正しいと考えています。

したがって、基本的なあるべきスタンスとしては、テンプレートや過去の“似た”プロジェクト資料があったとしても、今の、目の前のクライアントに刺さる資料をあくまでゼロベースで検討し、作成するという姿勢が非常に大切なのではないでしょうか。

筆者の経験上、流用(に近いもの含む)された資料をクライアントに提出しても刺さらない、もしくは説明に熱がこもらず、次につながらないことが多い気がします。

そして、最近の案件では人材不足や一人当たりの案件対応数の多さから、流用に近いもので簡単に済ませることが効率的で正しいことだとデファクト化してきていることに寂しさを感じます。

ゼロベースで考えないとどうなるか

ここまで何だか偉そうなことを書いてきましたが、筆者にも流用した資料を作成した経験がありますのでご紹介します。

それは、提案書を量産するフリーランス案件でした。元請のファームにて引き合いが多いため提案書が追いつかず助けて欲しいという案件で、私としてはクライアントに訪問して事情を伺い、提案書を作成するという流れをどんどん繰り返ししていくものかと想像していました。

実際は、元請のシニアマネージャがクライアントから聞き取ったことや似た過去プロジェクトの提案書をメールで私に伝え、ひたすら私が提案書を“微修正”するというものでした。

20件/月くらいのボリュームを3か月続ける案件だったかと記憶しています。結果どうだったか。1件も取れていませんでした。

担当のシニアマネージャは「こんなに綺麗に提案書を作っているのに、なぜ提案が通らないのか?」とつぶやいていましたが、私は当然の結果だと思っています。

そもそも課題が表面的に同じであっても真因が異なっていたり、課題解決のアプローチや優先順位がクライアント毎に異なっていたりするため、付け焼刃の提案書など通用するわけがないのです。

さらに言えば、同一業界内で転職した人間が偶然にもこの資料を目にしたときどう思われる可能性があるのか。この旨をシニアマネージャに伝えたもののあまり理解頂けませんでした。

コンサルに求められるアウトプット品質

一般的に、“品質を満たしている状態”とは、要求事項が満たされている状態を指します。であれば、コンサルが満たすべきアウトプット品質は、当然ながらクライアントからの要求事項に対して、漏れなく満たしている状態となります。

この大原則を理解していれば、単純な過去資料の使いまわしができないことは理解できるはずです。

例えば、提案依頼書(RFP)をせっかく頂いたのに、似た過去案件だからといって過去の提案書を使いまわすことを想像してみてください。コンサル側のコミュニケーション能力(読む力、聞く力、書く力、話す力全て!)が疑われると思います。本来であればRFPを1行1行精査して丁寧に提案書を検討するはずです。

最後に

さて、コンサルタントの皆さんはこの文章を読んでみてどのような感想をもったでしょうか?また、コンサルタントを目指したい学生さんや他業界の社会人の方々はいかがでしたでしょうか?

それぞれ感じ方があると思いますが、ご自身の仕事や、学生さんなら課題レポートなど振り返ってみて、得られるものがあれば幸甚です。

[v185]

執筆者

フリーのコンサルタント 羽生
大手コンサルファームに複数所属後、フリーのコンサルとして独立。独立後10年以上の経験があり、無駄なコンサルをしないことにこだわっており、的を射た支援に好評がある。好きな言葉は、「守文則難」。
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