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PMOとは?プロジェクト別の役割や導入ポイントをコンサルがわかりやすく解説
プロジェクトによって異なるPMOの必要性、期待される役割や種類もわかりやすく解説
昨今のプロジェクト体制ではPMOが設置されるケースは珍しくありません。一方で、発注者やプロジェクトリーダー、メンバの中には、PMOの存在意義や価値に疑問を持たれている方も多いようです。本稿は、様々な立場の方がPMOについて抱く疑問や偏見を解消し、期待役割や関わり方について適切に理解してもらうことを目的に執筆しました。
また、PMO導入成功のポイントやメリット・デメリットなど、PMOについてあらゆる角度から解説しています。PMOに関わりがある方・興味がある方はぜひお読みください。
目次
PMOとは?
Project Management Office(プロジェクトマネジメント・オフィス)の略称で「ピーエムオー」と呼びます。
プロジェクトマネジメントを円滑に進めるための組織であり、一般的には以下のような役割が求められます。
◆準備:プロジェクトマネジメントの標準化
◆展開:プロジェクト内へのマネジメント標準の周知・展開
◆人材開発:プロジェクトメンバへマネジメント研修の実施
◆実践:プロジェクト状況チェック、問題・課題取り纏め、原因・真因追求、対応策案検討
◆報告・相談:PM*への適時適切な報告・相談
◆調整:プロジェクト内外とのリソース(人員、スケジュール、機材等)の各種調整
◆修正:マネジメント標準の見直し
*PMとは、プロジェクトマネージャー(Project Manager)のことで、プロジェクトにおいて進捗管理や品質管理を担います。PMは、プロジェクトの総責任者であり、プロジェクトの様々な場面で正確で迅速な意思決定を行うのに対し、PMOは、情報収集や関係各所との調整など、PMの意思決定を支えるサポートを行います。詳しくは第四章「PMとPMOの役割の違い」をお読みください。
PMOについてよく聞くこと・思われること
円滑なプロジェクト進行のために設けられるPMOですが、プロジェクトに関わる様々な立場の人からは少しネガティブな意見も耳にします。役割ごとの声をまとめてみました。
<プロジェクトリーダー(PL)、メンバ>
・PMOって何?
・プロジェクトメンバに偉そうなことを言うが役割が分かりづらい
・正直、PMOってプロジェクトの中で浮いていているし必要なの?
(余談)筆者は、数年前までは、PMOの良くない例を多く見てきて(そればかり見てきて、毛嫌いしていたこともあり)PMOの存在意義を否定していた一人です。
<PMO発注者>
・PMOの役割が良く分からない
・期待役割や使い方が分からない
・うまく機能しない
<PMO当事者>
・PMOとしてのキャリアをどう築けばいいのか
このような疑問や意見に対し、以下ではPMOの全容をわかりやすく解説していきます。なお、すべて読み切るにはある程度の時間が必要かもしれません。目次からご自身が興味のある章を選んでお読みいただくことをおすすめします。
PMOの設置形態
組織によってPMOの設置形態は様々ですが、代表的な例として以下のようなものがあります。
Case1.社内プロジェクトメンバをPM補佐としてPMOに任命
Case2.外部要員をPMOとして採用
一般的にすぐに思いつくのはこの二つのケースでしょう。体制図上ではPMとプロジェクト内の各チームの間にPMOが設置されます。状況に応じて、プロジェクト内各チームに派遣され円滑なチーム運営の実施・定着化を支援します。
Case3.社内のPMO専門組織からプロジェクトへPM補佐としてPMOを派遣
プロジェクトマネジメントの専門知識、経験とも豊富な人材からなるPMO専門組織を設置し、各プロジェクトへPMOを派遣します。こちらも、プロジェクト体制上は、Case1・2と同様の配置になります。
Case4.プロジェクトへPM(プロジェクトマネージャー)を派遣する専門組織
特にIT業界では聞きなれないですが、1~3とは異なり、「プロジェクトへPM(プロジェクトマネージャー)を派遣」するための専門組織としてPMOを設置する企業もあります。
例)日揮ホールディングス社
PMOが最も必要とされる場所 :タイム・コンサルタントの日誌から
私の勤務先である日揮は、PMOという名前の組織はない。プロジェクト本部という組織があり、それとは別にエンジニアリング本部という機能別組織(電機・機械・化学・建築・制御・シビル等の設計者集団)がある。プロマネはプロジェクト本部に属して、各案件(プロジェクト)ごとに機能別組織の横串を通すマネジメントを行なう。つまり、典型的なマトリクス型組織である
(余談)上記ブログ筆者(佐藤知一氏)は、長らくプラントエンジニアリング企業の日揮に勤められ、プロジェクト計画やプロジェクトマネジメントに関する書籍の執筆、PMに関する諸団体での講演など、日本国内のプロジェクトマネジメントに貢献されている方です。
なお、以降の記事は、ITプロジェクトで一般的なプロジェクト組織(Case1・2)におけるPMOを対象としています。
PMとPMOの役割の違い
第一章「PMOとは?」で少し触れましたが、PMとPMOでは明確に役割が異なります。PMの役割は、「プロジェクト目標を達成すること」です。一方、PMOの役割は「プロジェクトマネジメントを円滑に運営すること」にあり、関係者等含めてその違いは以下の通りです。
PM | PMO | |
---|---|---|
役割 | プロジェクト目標の達成 | プロジェクトマネジメントの円滑な運営 |
関係者 | ・プロジェクトオーナー(PO) 以降は、PMOとの役割分掌次第 ・プロジェクト各チームリーダー(メンバ) ・プロジェクトに関連する他プロジェクト ・プロジェクトに関連する各種部署 |
・プロジェクトマネージャー(PM) ・プロジェクト各チームリーダー(メンバ) ・プロジェクトに関連する他プロジェクト ・プロジェクトに関連する各種部署 |
報告先 | PO | PM |
活動 内容 |
・PMOの一連の機能(PMOを設置しない場合) ・プロジェクトの鉄の三角形へ納めるための各種判断・指示 ・POへのプロジェクト概況報告 ・POへのプロジェクト計画変更交渉(プロジェクトの鉄の三角形を見直しが必要な場合) |
・プロジェクトマネジメントの標準化・見直し ・プロジェクト内へのマネジメント標準の周知・展開 ・プロジェクトメンバへマネジメント研修の実施・定着化 ・プロジェクト状況収集 ・プロジェクト状況分析(問題・課題定義、原因・真因追求) ・プロジェクト問題・課題への対応策案定義 ・プロジェクト運営の安定化 ・PMへの適時適切な情報報告・相談 ・プロジェクトリソース管理(要員勤怠、作業進捗、チーム間での要員・スケジュール調整等) |
POとは
POとは、プロジェクトオーナー(Project Owner)の略で、プロジェクト全体の責任者を指します。通常は経営マネジメント層がその役割を担い、体制図ではPMの上のトップに立ちます。プロジェクトがビジネスの戦略に沿っているか等経営視点で判断を下します。
なお、同じPOでもプロダクトオーナー(Product Owner)とは全く役割が異なります。プロダクトオーナーはプロダクト開発において役割を担い、主にスクラム開発を行なう際に導入されます。
PMOの必要性
プロジェクトマネジメント機能は多岐にわたり、プロジェクトが大規模(プロジェクト内チーム数、メンバ数等)かつ複雑(多様な関係者、複数システムの連携等)になればなるほど、プロジェクトマネジメント機能は複雑化し作業量は多くなり、結果として難易度が高くなる傾向にあります。このような状況下でPMが一人でプロジェクトマネジメント機能全てを実践するのは現実的ではありません。
企業活動を円滑に実施するために組織の拡大とともに業務機能を分割して組織が細分化されるように、プロジェクトも目標達成へ向けて意思決定機能を除くPM機能の一部または全部をPM以外のメンバへ移譲することが考えられます。その期待役割を担うのがPMOです。
実はいろいろあるPMOの種類
PMOの種類について、一般社団法人 日本PMO協会での定義を照らし合わせながらご紹介します。
1.事務局タイプ(日本PMO協会での定義:「PMOアドミニストレータ(PMO事務)」相当)
- 会議開催準備や議事録作成、発生した課題や進捗の確認が主な活動
- ルーティーンワークが圧倒的に多く、難易度は低め
本稿の冒頭に示したように「PMOって何?」「プロジェクトメンバに偉そうなことばかり言うが、役割が分かりづらい」「正直、PMOってプロジェクトの中で浮いていているし、必要なのか?」のようにとらえる方々の大半は、このタイプのPMOを目にする機会が多いためと筆者は推測しています。
2.支援タイプ(日本PMO協会での定義:「PMOアドミニストレータ(PMO事務)、(一部)PMOエキスパート」相当)
- ステコミ*に向けた資料作成や各工程の計画書作成、ベンダの進捗・品質・リスク管理といったPM業務を支援
- 進捗・品質・リスク管理はプロジェクトが定めたルールに従い、形式的に運用
- 要件定義や基本設計工程に多い印象で、経験値のあるPMOメンバだと資料の流用など効率化を図れるので難易度は中程度
*ステコミとは、ステアリングコミッティ(Steering Committee)の略で、運営委員会を指します。株主や事業パートナー、関連部門の代表者などで構成され、相互の利害関係などを調整し、プロジェクトの速やかな進行を支援します。
3.課題解決タイプ(日本PMO協会での定義:「PMOエキスパート」相当)
- 2の支援タイプの上級版
- プロジェクト上の課題が起きた場合、整理や会議の場でのエスカレーションだけでなく、ユーザやベンダの中に入って解決の方針を策定し、課題が解決するまでトレースする
4.リスク検知タイプ(日本PMO協会での定義:「PMOマネジャー」相当)
- 3の課題解決タイプのスゴ腕版
- あたかも企業参謀さながらPM参謀として、PMへ迅速な共有・提案を通してPMの意思決定を支援
- プロジェクトリスクが可能な限り顕在化させないように、未然防止案の検討のうえ、PMへ報告・提言
- リスクが問題として顕在化した際には、問題の発生原因・真因を突き止め、対応策案を検討のうえ、PMへ報告・提言
PMOのあんなこと、こんなこと(ほんのちょっと、つぶやき)
炎上プロジェクトでは火消し役でPMOが投入されることがあります。投入されたPMO(達)は、(自分たちは責められない安全地帯という蚊帳の外から)ドヤ顔で問題・課題や原因を指摘し、上から目線でPLやメンバたちに接することを目にすることがありますが、これは褒められた行為ではありません。
PMOと各チームのリーダーやメンバは単に役割が違うだけであり、関係性に上も下もありません。PMOが全うすべくは、「プロジェクトマネジメントの円滑な運営」ですが、左記の態度では「プロジェクト崩壊」を招くのは明らかです。このようなPMOを見つけた際には、勇気をもってPM(ないしはそのうえ上に)エスカレーションしましょう。プロジェクトに寄り添うPMOであってほしいものです。
PMO導入成功のポイント
PMO導入の判断基準
PMが優秀で、プロジェクトに時間を割くことが出来る場合は1の事務局タイプで十分ですし、基幹システムの大規模リプレイスで失敗したら“ヤバイ!”場合は、4のリスク検知タイプのPMOを設置すべきです。また、1~4の全てのPMOをバランスよく揃えるというのもありえます。
つまり、プロジェクトの性質によってPMOの必要性、必要とするPMO機能は異なります。PMO導入には、PMを含めたプロジェクトメンバや開発ベンダのスキル、予算、プロジェクトの重要性から判断しますが、目安として、以下のことをPM一人で対応が困難な場合は、PMO導入検討をおススメします。
- プロジェクト規模(チーム数、メンバ数)
- プロジェクト管理対象*の数やプロセス数、関連性(複雑化否か)
*プロジェクト活動の各種計画、スコープ管理、スケジュール管理、リスク・問題・課題管理、コスト管理、品詞管理など
外部要員としてPMOを選定する際のポイント
外部要員でPMOを調達する際には以下のことをポイントに選定されることをおススメします。(なお、PMO機能が高度になればなるほど高額になる傾向)
- 提供されるPMO機能は、期待役割に沿ったものか
- 予算感に合うか
- 企業やプロジェクト情況を理解したうえでサービス提供できるか
プロジェクトへPMOを投入する際のポイント
PMO導入デメリットを引き起こさず、円滑にプロジェクト運営ができるよう、以下のポイントを実践することをおススメします。
- プロジェクト全体へのPMO投入理由や期待役割について事前説明
- 定期的な機能評価(直接チェック、メンバからのヒアリング)
次の章では、PMO導入におけるメリット・デメリットを具体的に挙げてみましょう。
執筆者
- SIer・ITコンサルファームでのキャリアを積む。大規模システム刷新プロジェクトにおける業務要求定義からシステム導入運用まで幅広いフェーズや大企業でのDXにおけるPgMOのリーディングや実務をこなす。業務・IT双方へ精通し、関係者との迅速な関係構築のうえ、両面からの業務改革支援に強みを持つ。
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