view 550
DX推進に欠かせないCIO、CTO、CDOとは?役割やスキルについて解説
単なる業務の効率化にとどまらず、企業の価値向上や持続的成長に向けた経営戦略の一つとして推進されるDX。生成AIの急速な進化などにより、その取り組みはますます高度化しています。そのような中、自社のデジタル戦略推進の責任者である「CIO・CTO・CDO」の役割が重要視されています。本記事では、「CIO・CTO・CDO」の概要とそれぞれの違い、DX推進における役割について解説します。
コンサルタントとしてDX推進に関わる方法についても解説しています。DX案件への参画を目指すコンサルタント志望の方はもちろん、DX推進に関してコンサルへの依頼を検討している企業の方にも役立つ情報となっていますので、是非最後までお読みください。
目次
CIO、CTO、CDOとは?それぞれの違いも解説
CIO、CTO、CDOの役職名と役割を比較すると以下の表のようになります。
役職 | 役割 |
CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者) | 自社の経営戦略にあわせたIT戦略の構想を立て、システム面も含め推進すること |
CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者) | 現場の問題解決を技術面からサポートすること |
CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者) | デジタル化・DX推進プロジェクトの責任者。経営的な視点からDX戦略の構想をまとめ、実行する |
各役職の詳細と、それぞれの違いについて解説します。
CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)
CIOとは、Chief Information Officerの略で「最高情報責任者」や「情報統括役員」と訳されます。CIOの役割を一言で表すと「自社の経営理念にあわせたIT戦略の構想を立て、推進すること」です。
CIOには、業務コスト削減や企業価値向上のために、DX推進も含めたIT戦略の構想を立てる役割があります。
<CIOの主な役割>
- 意思決定スピードアップのための社内システム最適化
- 社内情報のデジタル化
- ITシステムを使った他部署との情報共有
- IT人材の確保
- セキュリティ対策の方針決定
- IT投資マネジメント、適正化
CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)
CTOとは、Chief Technology Officerの略で、最高技術責任者と訳されます。CTOの役割は、現場の問題解決を技術面からサポートすることです。テクノロジーやシステムを導入する際の意思決定に携わるので、技術的な専門知識は欠かせません。技術部門の開発部長が兼任したり、SEからキャリアアップしてCTOに就任することもあります。
<CTOの主な役割>
- テクノロジーやシステムを導入する際の意思決定
- 技術的な観点から経営層に提案
- 研究開発
- 組織体制づくり、採用
CIOとCTOの違い
CIOは自社に効果的なIT環境を管理・導入するための戦略を考える立場であるのに対し、CTOは現場の技術的問題を解決する立場で、より現場に近い存在です。CIOには経営やマネジメントに関する能力も求められ、技術面に直接携わるCTOには、技術的な専門知識が不可欠となりますが、CIOとCTOを同じ人が兼任する場合もあります。
CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)
CDOとは、Chief Digital Officerの略で、最高デジタル責任者と訳されます。CDOは、企業のデジタル化やDXを推進する役職です。経営的な視点からDX戦略の構想をまとめ、実行します。CIOやCTOも外部企業を含めた横断的な取り組みは必須ではありますが、DXは全社的な取り組みになる場合が多いことから、CDOは特に他部署や外部企業、コンサルタントとの連携が必要となります。
<CDOの主な役割>
- デジタル化・DX戦略の立案
- 各部署との調整、連携
- 社内のデータ整備、活用
CIOが企業のIT戦略における責任者、CTOが技術面での責任者であるのに対し、CDOはデジタル化・DX推進プロジェクトの責任者であるという点が大きな違いです。
経産省が発行する「DX白書2023」によると、「日本でDXに取組んでいる企業の割合は2021年度調査の55.8%から2022年度調査は69.3%に増加、2022年度調査の米国の77.9%に近づいており、この1年でDXに取組む企業の割合は増加」しています。
しかし、「全社戦略に基づいて取組んでいる割合は米国が68.1%に対して日本が54.2%となっており、全社横断での組織的な取組として、さらに進めていく必要がある。」としています。
また、一般社団法人 CDO Club Japanが2022年に行った調査によると、「企業におけるDXの責任者」が明確になっている企業は全体の46%でした。一方で、CDO(Chief Digital Officer)を任命する企業は2.7%となっており、約7%の企業はCIOがDXの責任者を兼任しています。
このことから、DX推進に取り組む日本企業は増えているものの、「経営指標に紐づく成果を得られるDXの推進」にはまだ取り組みの余地があり、今後、CDOの役割はより重要になってくるといえるでしょう。
2つのCDO
CDOには、Chief Digital Officerのほかに、Chief Data officerを指す場合もあります。こちらは、データ分析やデータマネジメントなど企業が有するデータの活用を推進する役割を担い、Chief Digital Officerとは異なります。
CIO、CTO、CDOに求められるスキル
企業の経営課題を技術的な面から解決したり、経営方針を技術面から支えたりするCIO、CTO、CDOには、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。
以下より一つずつ解説します。
CIOに求められるスキル
CIOに求められる主なスキルは、以下の3つです。
- 経営・マネジメントに関するスキル
- コミュニケーションスキル
- 最新技術に関する知識
CIOは企業全体のIT戦略を決定する立場なので、経営やマネジメントに関するスキルは不可欠です。IT戦略を担う以上は技術的な知識も必要で、特にAIやIoTなどIT技術の最新動向は常に把握している必要があります。
社内での調整や連携が必要となるので、コミュニケーション能力が必要となる場面も多いです。
CIOになる方法としては、企業の情報システム部に配属されキャリアアップしてCIOになるケースや、通信やテック系などの企業の事業責任者や経営者などが社外からのヘッドハンティングで就任するケースも多いです。
CTOに求められるスキル
CTOに求められる主なスキルは、以下の4つです。
- ITなどの技術面に関する高度な専門知識
- 柔軟な思考力
- コミュニケーション・マネジメントスキル
- 経営に関する知識
CTOは現場の課題解決を技術面でサポートする責務があるため、IT分野の技術的な専門知識が必要です。エンジニアとしての開発経験は必須です。
現場の課題を解決するためには、多角的に物事をとらえ、時にはまったく新しいやり方で組織改革をする必要があります。IT技術の進化は非常に早く、常に最新動向をキャッチアップしておかなくてはなりません。そのため、CTOには柔軟な思考力が求められます。
現場のトップに立ってプロジェクトを進め、時には他部署との連携も必要になるので、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルも必須です。技術部門から経営層へ提言することもあるので、経営に関する知識が求められる場面もあります。
CTOになるためには、企業の技術部門からキャリアアップしていく方法が一般的です。
一方で、CTOポジションを募集している求人もあるため、転職してCTOになることも可能です。
CDOに求められるスキル
CDOに求められる主なスキルは、以下の4つです。
- ITの専門知識
- DXに関する知識
- 交渉・調整・コミュニケーションスキル
- マーケティングなどビジネスサイドの知識
DXプロジェクトを推進するためには、データや先端技術への深い知識だけでなく、市場の変化を捉えた新たなビジネスモデルへの理解や洞察力、プロジェクトを統括するマネジメントスキルが必要になります。
社内の各部署や、社外のベンダー・コンサルタントとの交渉や調整が必要になるので、コミュニケーション能力を発揮する機会も多いです。
CDOの業務には、高い専門知識と柔軟な発想で戦略を立て、各部署と連携しながら組織改革を推し進めていけるスキルが必要です。
DX推進にはCIO、CTO、CDOの存在が不可欠
単に技術的な専門知識があるというだけでなく、経営やマネジメントのスキルをもち、会社の方針そのものを決定するためにCIO、CTO、CDOの存在が必要不可欠です。
技術的な面から組織改革を経営層に提案して戦略を立案し、リーダーシップをもって社内全体を指揮してDX推進を成功させなければなりません。なかでも、DX推進においては、技術的な面から組織改革を経営層に提案して戦略を立案し、リーダーシップをもって社内全体を指揮するCDOが大きな役割を果たします。DXが思うように進まない企業はCDOのポジションを設けることが急務と言えるでしょう。
では、DX推進においてCIO、CTO、CDOは具体的にどのような役割をになっているのでしょうか。以下より一つずつ解説します。
DX推進におけるCIOの役割
DX推進におけるCIOの役割は、自社の経営戦略や理念に沿って、DX推進の全体方針を決定することです。日本情報システム・ユーザー協会では、DX推進事業におけるCIOの役割を以下のように定義しています。
DX推進では、ビジネスを変革するためにDXに適した組織変革や業務のデジタル化などを行います。企業全体の状況を把握・分析し、企業価値を高めるためにどのようなDXが必要なのかという構想を立てるのがCIOの役割です。
DX推進におけるCTOの役割
CTOの役割は、技術部門の責任者として、経営戦略に沿ったDX推進の構想を立案することです。
企業の方針を決定するDX推進事業を、技術面から提案し実行するポジションです。経営戦略に基づいた、DX推進事業の技術戦略を立案します。高い専門知識を活かし、システムやテクノロジーなど技術に関する意思決定を行うのが主な役割です。
エンジニアの採用に携わることもあり、人材確保がCTOの業務の一つになることもあります。
DX推進におけるCDOの役割
最高デジタル責任者であるCDOは、デジタル化による業務フロー策定など単なるデジタル化に関しても責任を負いますが、主にDXにおいて大きな役割を担います。
具体的には、デジタル技術を駆使した新事業を創り出すなど、デジタル領域で経営判断を伴う業務を遂行します。そのため、CDOはDX推進事業の「旗振り役」とも呼ばれ、なくてはならない存在です。
コンサルファームにおけるCIO、CTO、CDOのポジションとキャリアパス
コンサルファームが設けているCIO、CTO、CDO関連のポジションとキャリアパスをご紹介します。
KPMG:CIOアドバイザリーコンサルタント
コンサルファームBig4の一つであるKPMG コンサルティングのCIOアドバイザリーは、主に以下のような支援を行っています。
- デジタル化を見据えたCIOアジェンダ構想
- 生産性改善を目的としたIT部門の構造改革
- クラウドを活用した短期での海外事業立ち上げ
- ITサービス提供モデルのグローバル標準化
(参照:KPMG CIOアドバイザリー)
クニエ:CIO、CTO、CDOサポート
国内の大手コンサルファームの一つであるクニエでは、CIOやCDOのサポートとして以下のようなコンサルティングサービスを行っています。
<CIOサポート>
- IT戦略立案・ITガバナンス構築サービス
- 組織変革・働き方改革推進サービス
- IT企画・定着化サービス
- 分社化・M&A支援サービス
- デジタル化構想・PMOサービス
- ITリサーチサービス
(参照:クニエ ITマネジメント(CIOサポート))
<CDOサポート>
IoT、AI、ブロックチェーン、ビッグデータ/アナリティクスなどのデジタル領域での先進のテクノロジーを活用したお客様のビジネスモデル/サービスの企画/実現支援
(参照:クニエ デジタルビジネスコンサルタント(CDOサポート))
ITコンサルからCTO、CDOへ
ITコンサルの経験者であれば、IT技術に関する高度な専門知識を活かしてCTOやCDOのポジションに就くことも視野に入れられます。
特にITコンサルのマネージャークラスを経験している人であれば、マネジメントスキルを活かしてCTOやCDOに就任することも可能です。
まとめ
企業のDX推進事業には、経営戦略に沿ったIT戦略を立案し、システムやテクノロジーの導入決定、業務フローの見直しをはじめとする組織改革が必要です。
DX推進事業の全体計画を立て、それを実行するための責任者が必要であり、それがCIO、CTO、CDOの役割です。特にCDOは、DX需要が高まるにつれそのポジションも注目を集めています。
コンサルファームでもCIO・CTO・CDOサポートのコンサルティングサービスを行っています。現在IT分野の業務を行っていてコンサルタントへの転職を検討している人は、CIOアドバイザリーやCTOサポートのポジションを検討してみてはいかがでしょうか。また、ITコンサルからCTO・CDOへキャリアチェンジをする人も多いです。
Consul Careerでは、コンサルタントを目指すIT関連職の方や、ITコンサルからのキャリアチェンジも支援しています。
最新の市場動向をふまえながら、一人ひとりに沿ったキャリア形成の支援をしております。ぜひConsul Careerに無料登録のうえ、キャリアについてお気軽にご相談ください。
【v248】
執筆者
- ITやBPR領域でのコンサルティングを得意とする。新規領域でコンサルとしてのキャッチアップ能力の速さと無駄なことをしないスタンスで、周りを巻き込みながら最適なアプローチで課題解決をはかる。
最新の投稿
著書紹介
おすすめサービス
執筆者
- ITやBPR領域でのコンサルティングを得意とする。新規領域でコンサルとしてのキャッチアップ能力の速さと無駄なことをしないスタンスで、周りを巻き込みながら最適なアプローチで課題解決をはかる。