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執筆原価は1,000万円超、書籍執筆苦労記 | 『コンサル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』を書いてみて

執筆原価は1,000万円超、書籍執筆苦労記 | 『コンサル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』を書いてみて

スコープマネジメント(カバー領域)、クオリティマネジメント(記載粒度・明瞭さ)、制約事項(文字数制限、図解の制約、2ページ1テーマ制約)といった点で苦心

2022年4月30日発売の『コンサルティング業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』の執筆に関して、そのきっかけから、最終校了に至るまでを時系列で振り返ってみたいと思います。書籍内でも言及しておりますが、読者層のポートフォリオに合わせて、いかに分かりやすく表現するかに最大限苦慮しましたが、この振り返り記事では、読者層を気にせず、書きたいままに自己の表現で羅列しております。

執筆のきっかけと苦悩

執筆に際して、本書は技術評論社よりお話を頂戴したのがきっかけとなります。

実用書等で名高い会社さんですが、コンサルティング業界がやはり注目されているとのことで、執筆者を探しており、ネット等各種情報を結構確認したそうで問い合わせ下さいました。最初メールで問合せを頂戴したものの、私がメールを見落としており、改めてお電話いただいた次第です。なので、この電話が無ければ書いてもいません(爆)

通常は自費出版が一般的な実用書ですが、この手の話をいただけるのは有難い話のようです。とはいえ、当方も、そのような出版事情に疎く、実務のコンサル案件や会社運営を考えるとそこに割り込む隙も考えられず、断る方向性で考えておりました。

しかしながら、当サイト(コンサルのあんなこと、こんなこと)や自社で保有しているデータや研修コンテンツ、社内メンバの協力スタンスを考えると、さほど苦労せず書けるのではないかと執筆する方向性で考えました。無論、インナー及びアウターのブランディング要素でのメリットも考慮した次第です。

やはり、労力を気にする著者は多いようで、打合せ時に「インタビュー形式で全部こちらで一通りしゃべり、それを出版社側に纏めていただく形」をご提案頂きました。

が、ここでよしておけばよいのですが、品質を気にしだし、「そんなに纏めて綺麗に話せない」「書きながら整理される要素が多そう」という論拠のもと、「こちらでドラフトを書くので、それを字数及び明瞭さ含めうまく纏めてほしい」という話を持ちかけ、その形態で進めることになります(結局のところやり始めると、職業病で出版社に「字数と明瞭さ」と言っておきながらも、自分自身でも初回執筆時から最大限考慮しだして、自らの首を絞めておりました)。

プロジェクトマネジメント:職業病で最初に枠を決めてリスクへも配慮する

本の一般的なプロセスや用語は最後まで学習せず、フェーズ切りもこれまでの事業再生のプロジェクトもあれば、システム開発のプロジェクトもあれば、新規事業策定のプロジェクトもあればで、本そのものの経験は無くとも、これまで培ってきた経験で間違っていないだろうという慢心のもと、執筆を始めました。

▼プロジェクト管理ファイル
まず、プロジェクト管理用のファイルを作りました。こんなイメージです。

コンサル業界の実用書プロヘクト管理用ファイル

これに準拠する形で、各ページを執筆していく形ですが、本書籍の特性上、一気に思うがまま書き続ければいいものではなく、2ページに1テーマで纏めて書いていく必要があります。なので、各テーマの執筆概要、ステータス、サブテーマ、リサーチの有無といった項目管理がmustでした。

特にステータスは、出版社ともテーマごとでやり取りするので、どっちがボールを持っているか、何回目のやり取りか等を管理できるようにする必要もありました(当然、同シート以外に、todoや課題一覧等のシートも存在します)。

▼WBS
フェーズ切りのもと、WBSを3階層にし、テーマ単位での所要時間を見積もり、これらに執筆工数、レビュー工数、出版社とのやり取り工数といった各種工数を考慮し、全体スケジュールを作りました。

とはいえ、最初の見積もりはパイロットで作ったページを参考に難易度を踏まえた係数掛けで算出しましたが、文字数調整(後述)の工数及び“明瞭さ”の観点では見積もりが甘く、当初の見積もりとは大分乖離したものとなり、さらにそれに、読み過ぎで自分自身がマヒするという事象も起き、半年ぐらいで執筆のスケジュールから、1年程での執筆にリスケしました(プロジェクト繁忙というのもありましたが)。

▼コミュニケーション管理
Teamsでのチーム構築、ファイル共有の他、管理ファイルはスプレッドシート化の上WEB共有。執筆原稿も通常はワードと思われそうですが、構造化される要素が強く、複数人編集もありうるのでエクセル形式のスプレッドシートにて執筆しました。

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設計の苦悩

章構成からまず検討に入りました。

他のコンサル業界本も読んでみて、一長一短ですが、ざっとこんな感想を持ちました(全てそうと言っているわけではありません)。

・業界にいる人が読めば分かるが、分からない人からしたら読んでもまず分からない
・MECEである必要はないもの、構造のレイヤーがまちまちで話が分からない
・上記にも紐づくが、そもそも分かってない人からすると何が重要か分かりづらい
・何故かロジカルシンキングのフレームワークだらけで、そこまで使うかというのが正直なところ

これらの課題に配慮し、最適な章構成・ボリュームバランス・分かりやすさを探求しました。

また、知識やスキル面として、経済学、市場原理や、会社法や、データ分析や、デザインシンキング、会計基本やらを組み込もうと思ったものの、ページ数の兼ね合いと私の体力(耐力?)で無くなりました。

結果、至った構成としては、下記のとおりです。特段7章の今後のコンサル業界はもっと最新テーマに触れたかったのですが、総ページ数の限界と至りました。

コンサル業界の実用書 目次1
コンサル業界の実用書 目次2
コンサル業界の実用書 目次3

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執筆の苦悩

明瞭さに関しては、BtoBに馴染みの無い学生にどこまでフォーカスして書くか悩みました。購入いただいた友人の坊さんや銀座のクラブのママやスナックのママや自動車整備会社の社長からは「横文字だらけで難しくて全然分からない。」とお叱りを受けましたが、それも今後改訂する場合には見直したいと思います。

本書の「はじめに」のあとに「本書の読み方」も記載の通り、「説明すること」を目的としたわけではなく、「理解・習得してもらうこと(願わくばその先の「活用」も)」を主目的としておりますので、意識したのは、
最も伝えたい内容は、テーマをまたがっても数回表現する
・コラムや”One Point”で実体験踏まえ言及する

等々です。
※「本書の読み方」と通常の書籍には無いページを設けたのも、日本人の活字離れや思考力の低下等に配慮したためです。

兎にも角にも、字数との戦いでした。そもそも論として、字がデカく、右側に図解を最低一つという制約が大きいです。説明が分かりづらいと思い補足説明しようとすると今度は字数が足りなくなる、ただ足りな過ぎて分からない。であれば、別途1テーマ(2ページ)として切り出して構成レベルでの変更を行う形式で、アジャイル型で回していきました(結果的にこのケースが多く、ページ数の増大とともに、知識・スキル系のページを最低限にすることに繋がりました)。

総じて、執筆は目的が第一ですが、中身に関して言えば、QCDじゃないですが、WCJ(分かりやすさ・コスト(時間)・字数)がキーポイントでした。

コンサル業界の実用書 中身サンプル

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校了の苦悩

コンサル風に言えばレビュープロセスの事です、出版社とのやり取りで言うところ校了というほうが正しいと思われ、内部レビューで校了と言うのはちょっと不自然かもしれません。初校→再校→三校→念校→校了といった形で、最終が校了になるらしいです。(厳密には校了のあとも、刷了とかがあるらしいです)

誰に何をどう伝えるかというのが書籍のポイントであり、そのバランスを全体のドラフト作成後の調整でかなり時間を割きました。

初校を例にとると、赤入れの嵐でした。出版社さんが悪いわけではなく、やはりこちらも字数には配慮したとはいえ、図解含めた全体構成上、結構削らなきゃダメで、削りすぎで伝わらない等々がありました。校了時には、やり取りが乱発するものの、そこは上述のコミュニケーション管理を徹底していたので、ノンストレスで行えました。幸い、出版社側のITリテラシも高く、その点は大変助けられました。

まとめ

所要工数から配慮するに、結局のところ、1,000万円ぐらいの執筆原価といったところでしょうか(そもそも原価が高いコンサル業界というのもありますが)。これが、インタビュー形式であれば1/3~1/2ぐらいまで圧縮できた気もします。

改めて落ち着いて見返してみると、誤字・脱字以外に明瞭さ観点で修正したい部分もあれば、テーマとして追加したほうが良いと思われる部分も出てくるものの、総じて90点ぐらいの出来にはなっているものと自負します。特段、追加したいテーマはリサーチの緻密性をより探求するものであり、そこまでの工数を掛けなかったのが実態でございます。

末筆になりますが、本書はコンサルに限らずとも仕事の考え方、仕方にも大きく意味のある本だと思っております。ご興味ある方は是非ご一読下さいませ。

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執筆者

大谷内 隆輔
大谷内 隆輔コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。
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