6Gとは?Beyond5Gの実現で6Gや7Gの先に世界はどう変化していくのか
6Gには破壊的イノベーションのポテンシャルが秘められている?
携帯電話やスマートフォンの普及、動画視聴からオンライン会議の実現に至るまで、移動通信システム技術の進化は、これまで常に社会に大きなインパクトを与えてきました。しかし、5Gに関しては、イマイチ期待外れだった印象が拭えないのではないでしょうか。そこで本記事では、5Gを振り返り、「Beyond 5G」として注目される6G・7Gの技術進化と、それによって変わる未来についても解説していきます。
もしも本当に技術が目標に到達し、想像される未来が訪れるのであれば、これからのキャリアプラン、人生設計に役立つでしょう。ぜひ最後まで読んでいただき、自分なりの未来への備えとしていただければと思います。
目次
5Gのおさらい
【5Gまでの技術】
1G〜5Gといったこれまでの移動通信システムは、主に携帯電話やスマホの発展に寄与した技術であり、今や世界中どこでも動画の視聴やテレビ会議ができるようになりました。
5Gとは、第5世代移動通信システムの略称で、主に通信速度は4Gの20倍、遅延では4Gの1/10、デバイスの同時接続では4Gの10倍という性能向上を特徴としています。
【4Gまでのインパクトの違い】
5Gは世界を変えたか? 残念ながら当初の盛り上がりとは裏腹に、これまでの1G〜4Gの各世代が残したインパクトとは程遠く、正直拍子抜けした方も多いのではないでしょうか。
各世代の歴史とインパクトを振り返ります。
世代 | 年代 | 変化内容 | 社会的なインパクト |
1G | 1979年頃 | 初の移動体無線 規格にはアナログ方式を採用 | 自動車電話・ショルダーホンを使って、移動時の通話が可能になった |
2G | 1993年頃 | デジタル方式に移行 パケット交換技術によりデータ通信が本格化 | 携帯電話でメールの送受信が可能になった |
3G | 2001年頃 | 2Gの高速化・大容量化 | カメラ付き携帯電話が登場。WEBコンテンツや音楽、画像の視聴、軽いゲームのプレイが可能になった |
4G | 2012年頃 | 3Gの高速化・大容量化 | スマートフォンやタブレットが普及し、動画コンテンツの視聴や容量を要するオンラインゲームのプレイが可能になった |
5G | 2020年頃 | 4Gの高速化・大容量化 | 通信の超高速・大容量化による時間短縮や遅延改善、大量の端末の同時接続が可能に。VR、スマートシティ、遠隔手術等の普及に期待が高まる |
上記の表を見ていただければわかるように、4Gまでの世代では「できなかったことができるようなった」、「もっとこれができれば良いのに」という明らかなニーズが存在していてニーズ先行でした。
しかし5Gは、2時間の映画を3秒でDLできようが、今までもちょっと先の動画を少しずつストリーミング再生して問題なく動画視聴できていましたし、テレビ会議で画面が固まらなくなっても、ストレスが少し減る程度で、個人レベルでは技術の進化を実感しにくいかもしれません。
とはいえ、自動運転や遠隔医療といった分野では、高速通信・低遅延・同時接続といった進化は必要不可欠なので、この通信技術の進化は大いに貢献しており、倉庫システムやスマートシティ分野の進展に寄与しています。
ただ、おさらいとして当時CMで「ブロードバンド!!!5G!!」と盛り上がっていた割には、これまでの進化と比べて破壊的イノベーション(できなかったことができるようになる、有料だったものが無料になる)はなかったことをこの章では伝えたいこととして取り上げました。
それでは、6Gやその先の7Gではどうでしょうか?次章で解説していきます。
6Gとは?5Gから何が進化するのか?
5Gがスタートした頃にはすでに6Gやその先の7G(「Beyond 5G」とも呼ばれる)の研究もスタートしており、6Gについては2030年頃の実装を目標に研究開発されております。
4Gから5Gへの進化同様、6Gでは超高速化・低遅延化・多数同時接続は各10倍以上と飛躍的に進化するでしょう。これにより、5Gの際に囁かれていた自動運転やスマートシティ分野のさらなる進化、30K・60Kといった超高画質動画が当たり前になるかもしれません。
「なんだ、その後もその程度か・・・」と思った方に少しワクワクする話をします。
6Gでは、5Gに加えた主な機能拡張が3つあります。それが超カバレッジ拡張、消費電力・コストの低減、超高信頼通信です。それぞれ詳しく解説します。
超カバレッジ拡張:カバレッジとは電波が及ぶ範囲を意味しており、5Gでカバーしきれない自然の中や僻地を含む全ての地域に電波を届ける”陸上100%”に加え、5Gの枠を超えて空(高度1万m)、海(深海200海里)、さらに宇宙といったあらゆる場所での高速通信の実現を目指しています。これにより、これまで電波の届かなかった登山道や飛行機の中、さらには海でダイビング中の人と火星に移住した人が同時にビデオ電話するなんてことも可能になるかもしれません。
消費電力・コストの低減:6Gではネットワークやデバイスの消費電力量を現在の1/100以下にすることを目標としています。それに加え無線信号を用いた給電技術が発展すれば、充電不要な未来が待っているかもしれません。
超高信頼通信:通信の信頼度は、5Gの99.9999%から1桁改善した99.99999%を目標としております。自動運転や空中ドローン移動など、通信を利用した社会インフラを整備していくためには、この一桁の進歩はかなり大きな進展になります。
これを見てみればかつての4Gまでの破壊的イノベーションを6Gは起こしてくれるのでは?と期待が膨らみますね。次章では、これらの技術革新をもってしてどのような社会的なインパクト、未来が待っているのかを考えてみます。
6Gや7Gで予想される未来の社会
以下に、6Gがもたらす未来像を羅列してみます。
・仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の進化によって、3D映像が目の前に浮かび上がり、実際の職場環境と変わらないテレワーク環境で協調作業が行えるようになる。これにより、これまでよりも出社のメリットが減り、働く場所を問わなくなることで地域格差が解消される。
・自動で充電される仕組みが構築され、スマホデバイスをはじめ6Gに繋がれた家電なんかも電源を必要とせず自動ワイアレス充電され、コンセントや充電という概念がなくなる。
・空や海、僻地への高速通信が実現し、ロボット技術やIoTの進化も相まって、一次産業の無人化、高度化が進む。
・通信は人間が気付かないほどのタイムラグとなり、AIの進化も相まって、ロボットが人間の表情や行動から瞬間的に感情を汲み取り、違和感のないより人間らしいロボットが普及する。
・5感の再現が可能になるかも?従来の通信では、視覚(映像・テキスト)と聴覚(音声)が扱われていましたが、足や匂いや食感といった味覚・嗅覚・触覚の情報送信の実現も期待されています。もし実現すればVRと組み合わせて想像を超える体験やサービスが生まれるでしょう。
・ドローンタクシーの実現。上空での高速通信、ネットワークの高信頼性や省電力化等が進めば、ドラえもんのタケコプター並に気軽に空を飛んで移動することが可能になるかもしれません。また電力の省コスト化やこれまでの移動手段でいう鉄道や道路を要さないことから、タクシーレベルの移動が無料化する。なんてことも起こりうるかもしれません。
より具体的な技術的な問題や、それ以外の社会的な課題等には目を閉じた想像ですが、もし上記が実現すれば、第1章の表にある各世代の社会的インパクトを裕に超えたイノベーションが待ち構えているのかもしれません。
Beyond 5G(6G)におけるコンサルティングファームの取り組み
総務省が設立した「Beyond 5G 新経営戦略センター」には現在コンサルティングファームから、BCG、アクセンチュア株式会社、KPMGコンサルティング株式会社、PwC Japanが参加し、産学官の主要プレイヤーと、戦略的に知財取得・国際標準化に取り組んでいます。
中でもPwCは、総務省の委託事業「5G高度化等に向けた総合的・戦略的な国際標準化・知財活動の促進」において「5G高度化等の早期実現に向けた通信技術の国際標準化シーズに係る調査等の請負」を受託しています。
またBCGは、経産省の「重要技術管理体制強化事業」におけるBeyond 5G(6G)の国際調査や経産省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)から「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/生成AI基盤モデルの開発のあり方に関する調査」を受託してこれらに取り組んでいます。
グローバルに目を向けると、Beyond 5G(6G)は米中を筆頭に激しい競争が起きています。国際競争の中で日本が主導権を握っていくためにも、産官学が一体となり将来予測や国際的な動向を踏まえた開発ロードマップに基づく知財戦略を立案・実行していく必要があり、コンサルティングファームも、上記のような取り組みを進めています。
今後さらに研究開発が進んでいく中で、コンサルファームの役割として、ユースケースや通信の要求条件と技術を明確化していき、新興技術/先端技術の可能性を分析、産業化への関与と、それらを元にしたクライアント企業における事業創出、経営戦略立案、DX支援が広がっていくでしょう。
まとめ
当記事では、通信における5Gまでの歴史を振り返り、6Gで期待されている進化をまとめました。前章で述べた6Gがもたらす未来像は、もちろん想像の世界ではありますが、十二分に我々の生活を大きく変えるポテンシャルを持っていると私は思います。
そもそも、そんなことが実現した社会に私に残された仕事はあるのか・・・。6Gの可能性にワクワクすればするほど、キャリアに対して不安になりますが、一旦ネガティブなことは忘れて、今は目の前のクライアントに喜んでいただけるよう仕事に励みたいと思います。
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前職ではコダワリ・ビジネス・コンサルティング社にて社長秘書・営業部長を歴任。退職後は海外を拠点に多国籍企業のコンサルティングに特化したフリーランスコンサルタントとして、IT戦略、ビジネスプロセス改善、組織再編に関する専門知識を活かし、クライアントに対してデジタル変革と効率化の推進を支援している。
最新のグローバルトレンドと戦略的思考を強みにコダワリ社の理念であるGNH量産に奔走している。
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前職ではコダワリ・ビジネス・コンサルティング社にて社長秘書・営業部長を歴任。退職後は海外を拠点に多国籍企業のコンサルティングに特化したフリーランスコンサルタントとして、IT戦略、ビジネスプロセス改善、組織再編に関する専門知識を活かし、クライアントに対してデジタル変革と効率化の推進を支援している。
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