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事業会社への転職で評価される「コンサルスキル」とは

事業会社への転職で評価される「コンサルスキル」とは

事業会社に転職して分かった、コンサル特有の基礎能力を解説

コンサルタント特有のスキルといえば、ゼロベース思考・フレームワーク思考などの思考法をもとにした「論理的思考力(ロジカルシンキング)」や、パワーポイント・エクセルなどを使いこなした「資料作成」「プレゼンテーション」スキルが思い浮かぶかもしれません。もちろんそれらも、コンサルタントにとって欠かせないスキルですが、コンサルタントから事業会社に転職する際、本質的に役立つスキルとは何でしょうか。今回は、実際に事業会社へ転職したコンサルタントが実体験をもとに、コンサルティングファームで身に着けた特有の能力について解説します。

筆者は、約9年間勤めた外資系コンサルティングファームを辞めて、ベンチャー企業に転職しました。仕事を進めていく上で、コンサルタントとして培った自分のビジネススキルが事業会社でも大いに活かせる、そして評価されると気づきましたので、こちらでご紹介いたします。コンサルティングファームから事業会社への転職というキャリアにご興味がある方に参考になれば幸いです。

そもそも”スキル”とは何を指すのか?

まず”スキル”と言っても幅が広いため、今回ご紹介するスキルを整理したいと思います。

筆者が転職する際に利用した転職エージェントに、キャリアを築く上で必要なビジネススキルは大きく2種類あると言われました。それは、「テクニカルスキル」と「ポータブルスキル」です。

「テクニカルスキル」とは、職種によって変化する専門技術のことで、仕事を進めるにあたって欠かせない特定の知識や資格のことを指します。

一方で「ポータブルスキル」とは、論理的思考力やプレゼンテーションスキルといった、業種や職種が変わっても共通して生かせるスキルのことを指します。特定の業種や時代背景に捕らわれないため「ビジネス基礎力」ともいわれ、一般社団法人 人材サービス産業協議会によると、「業種や職種が変わっても持ち運べる能力」とも定義されています。

今回はより一般化して説明できるポータブルスキルに注目し、筆者がベンチャー企業に転職して特に役立っていると感じる下記3つのスキルについてお伝えしたいと思います。

①実行する力
②人に頼る力
③自分でやりきるマインドセット

実行する力

最初にご紹介するのは「実行する力」です。

コンサルティングファームでの仕事と事業会社での仕事の大きな違いは、言わずもがな実際に事業を行う当事者の立場かどうかです。

コンサルタントは、各種検討やリサーチを通して事業会社 (=クライアント)に示唆を出し、実際の事業運営に関する意思決定をクライアントが行います。つまり、コンサルタントはあくまでもアドバイスをするだけで、実際の実行権は事業会社側にあるという点が大きな違いです。

それでも、最適な実行アプローチを取るには、入念な下準備が必要であり、コンサルティングファームで培った”実行に移すまでのスキル”は事業会社転職後も役に立っていると感じます。

コンサルタントは、クライアントに納品するアウトプットが単なる資料だとしても、そのアウトプットに至るまでのプロセスを細かく整理・管理しています。その工程を書き出してみましょう。

クライアントが目指す姿 (ゴール)に行き着くまでの論点を洗い出す⇒
フローを可視化する⇒
具体的なタスクを整理する⇒
スケジュールを提示する⇒
そして関係者と認識を合わせていく。

筆者は現在ベンチャー企業にて、とある新規事業の責任者をしていますが、事業を推進していくことは上記と同じプロセスであると日々感じます。

例えば新規事業では、既存事業との関係性を考慮する必要があります。そのために筆者は、事業会社転職後、まず既存事業のAs-Is (現状)と新規事業が追加された時の既存事業のTo-Be (目指す姿)のフローを描きました。次に既存事業の関係者と一つひとつの業務や関係者、利用するツール等について認識合わせをし、変更点や変わらない点を確認する作業を行いました。さらに、様々な施策のトライアルを実施するに当たり、それに関連するタスクを一覧化し、スケジュールに落とした上で上長に実行許可を取りに行く必要もありました。

ただ、そういった資料作成は前職のコンサルタント時代によく行っていたため、スムーズに承認を得ることができました。その時の上司に『施策の案を出すことは他の人でもできるが、アイデアを本当に実現する段取りを設定できる人は少ない』と言われたのを今でも覚えています。

WBS*や業務フロー、認識合わせのための資料など、一つひとつの資料単体でみていくと、コンサルタントであろうと事業会社の社員であろうと作成できると思います。しかし、どの資料をどんな時にどんな順番で作る必要があるかを認識し、その資料をもって関係者と合意形成し、確実にタスクを実行していくという一連の流れは、コンサルタントであれば難なくできると思いますが、世間一般では難しいのかなと思います。

コンサルタント時代は、周囲の皆さんが当たり前のようにできていたので、特別なスキルだとは思っていませんでしたが、自身の転職後に、これは当たり前でないと、スキルとして価値があるものなんだなと強く感じました。

*WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトのタスクを細分化して、表形式にまとめたもの。

人に頼る力

次にご紹介するのは、「人に頼る力」です。

コンサルタントは、短期間でクライアントの業界、企業、業務を理解(インプット)して資料にまとめ(アウトプット)、クライアントに納得してもらう必要があります。

経験のない業界や業務に対して短期間でアウトプットを出さなければならないとなると、自分の持つ知識や経験だけではカバーできない場面も多々発生します。そのため、クライアントに現行業務がどうなっているかを教えてもらったり、他部署に繋いでもらって課題をヒアリングしたり、または自社内の専門家に意見を聞いたり…など、アウトプットを出す過程で、社内外問わず「他の人に頼る」を当たり前に実施しています。

前述でも少し触れましたが、現在筆者は、ある新規事業の全体統括マネージャーをしています。その業務の中で、事業オペレーションを整理するにあたり、「既存事業のルールはどうなっているのか」、また「既存事業がまだ”新規事業だった頃”はどのようにターゲットを定義し、営業活動を行っていたのか」についてヒアリングをし、情報整理の参考としていました。

時には、既存事業のクライアントに、新規事業のサービスに関して需要がありそうかをヒアリングすることもありました。このように、事業会社に転職後も、自分の事業を前に進めるために沢山の「人に頼る (=積極的に人を巻き込む) こと」を意識してきました。

しかし、ベンチャー企業に在籍する他の仲間をみると、「他人(特に他部署や社外の人)を頼る」ことがあまりない、そもそも「周囲を巻き込む」というアイデアが思いつかない、という人が多いことに気づきました。周りに頼りたくても、普段関わらない人であれば、声掛けのハードルが心理的に高くなってしまい、結局自分だけで完結してしまう。もしくは、他の人にヒアリングしたくても、何をどのように聞いたら良いかが分からないなど、意外と「人に頼る」ことができる人は、少ないようです

現在在籍している会社は、200人程度の小規模企業ですが、部署・チームごとに縦割りになっているので、他部署への声がけハードルが高いのは想像が付きます。事業を推進していく上で必要な情報やスキルの全体像を整理し、その上で自分やチーム内のリソースで足りない部分を外部に頼っていく。何事も自分一人では成し遂げられないので、その行動力やマインドセットは、事業会社で大いに役立つと感じます。

自分でやりきるマインドセット

最後にご紹介するのは、「自分でやりきるマインドセット」です。

前章では、「人に頼る力」についてご紹介しましたが、とはいえ、コンサルタントは一人または少人数でプロジェクトを回さなければならないことが多いため、一人ひとりの裁量権が大きくなる傾向にあります。そのため、「自分がやりきる」というマインドセットや、強い責任感が身についている方がコンサルティング業界には多いと感じます。

筆者も新卒でコンサルティングファームに入社したばかりの頃は、まだまだ自信もなく先輩方に頼り切っていました。しかし、新卒一年目の終わり頃に参画していた10数年年上のプロジェクトマネージャー(以下PM)と二人で行っていたプロジェクトで、ある変化が起きました。

ある日突然、そのPMが体調不良で休職してしまいました。急な出来事だったため、パートナーに相談してもすぐに人をあてがうことができず、自分でなんとかする必要がありました。もちろん周りには頼りつつも、クライアントと直接向き合うのは自分だけ。覚悟を決めてやるしかなくなったのです。

筆者のような体験は、あまり多くないとは思いますが、入社何年目であっても”一緒にやっているパートナーが忙しすぎて丸投げされている”や、”PMが前のミーティングが伸びていて出席できないので、クライアントとのミーティングを自分でどうにかするしかない”や、“PMが他のプロジェクトで忙しいので、本プロジェクトのリードは自分に任されている”などといった経験は、コンサルタントあるあるではないでしょうか。

そんな中自然と身につくのは、「責任を負うと覚悟を決めて、自分でなんとかしようとする」というマインドセットです。

現在の事業会社におけるワークライフを通じて感じるのは、やり遂げることへの強い責任感を持っている人は、周囲から信頼されやすく、仕事を任されやすいということです。なぜかというと、こういった人は周囲から見て「この人ならなんとかしてくれる気がする」と思われ、「失敗しても(自分で責任を負うと決めているので)学んで次に生かしてくれる」と高く評価されているからです。

ベンチャー企業は常にリソースが足りていないことから、一人ひとりの裁量が大きくなりがちです。私も入社後すぐに新規事業のマネージャーを任され、半年後には別のチームのリーダーも兼任することになりました。上司は相談には乗ってくれるものの、基本的には自分でプロジェクトを進めていく必要があります。自分でやりきると覚悟を決めて、失敗も糧にしながら成長を目指していく姿勢が評価されたことで、複数チームのリーダーを任されるに至ったのだと思います。

まとめ

今回は、コンサルティングファームからベンチャー企業に転職した筆者の経験を基に、どちらの業界でも評価されるポータブルスキルについてご紹介しました。

もちろん転職活動時は、自分の持つポータブルスキルを整理し、面接などでアピールしていました。ただ、仕事内容も働く環境も周りのメンバーも大きく異なるので、「これら(自身が持つ)スキルが、異業界でも役に立つのか?」という点は疑心暗鬼でした。そんな中でも仕事をしていると、徐々に周りから「コンサルタントでは当たり前と思っていたこと」が事業会社では評価されると気づき、本記事を執筆するに至りました。一人の体験談ではありますが、少しでも皆様の参考になれば嬉しいです。

▶▶転職でお悩みの方は、是非こちらよりお問い合わせください↓

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