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コンサルファームの業界地図2024年版 | コンサル業界カオスマップ
2024年7月時点でのコンサル業界の分類と各社のポジショニングを直感的にわかるようにまとめました。
「コンサルティング会社カオスマップ」の最新版2024年版を公開致します。
これまで力強い成長基調を示してきたコンサル業界ですが、2023年の後半頃より成長傾向にも陰りが見え始めてきました。しかし、大手総合系をはじめとして各社順当な売上拡大をしている状況ではあり、業界としての成長は続いている状況です。
DX支援はクライアントからのニーズが高くあり続け、コンサル業界自体を支える当たり前のコンサルテーマとなりました。さらに、GXなどのサステイナビリティ案件も広がりを見せてきており、2024年は一気に生成AIテーマがトレンドとなりました。
コンサルファーム同士の統合などは起きておらず業界全体としては大きな変化はありませんが、最新のコンサル業界を見える化したカオスマップをご確認下さい。
目次
コンサルファーム カオスマップ 2024年度版 見方と前提
カオスマップとは、特定業界における事業者を、項目に応じてカテゴライズした「業界地図」です。当社が提供している「コンサルティング会社 カオスマップ」では、コンサルティングファームの得意領域を7つに分類し、さらに詳細に中分類区分を設けています。
コンサルティングと言っても様々な支援領域がある中で、今のコンサル業界を直感的に捉えられる内容になっており、業界構造をわかりやすく把握できます。
■複雑化する分類を、より実態に沿うように大分類・中分類にカテゴライズ
大分類は「戦略」や「組織・人事」など5分類としており、マップの外周で区切りを表しております。中分類は、たとえば「業務」系をトップライン向上や業務効率化などを軸とする「ビジネス」と、ITサービス導入支援を軸とする「IT」に細分化しています。
「業務」と「FAS」の2つの大分類に中分類が存在しており、全体としてコンサルティングを7領域に分けて表現しています。
■明確に線引きできない得意領域を矢印で表現
マップ上の矢印はカバーする領域を示します。矢印上にある企業群は同じ領域に属しますが、位置は順不同であり分類に沿うものではありません。
※弊社調査に基づき主たる領域を示していますが、実態はご自身でご確認いただくことをお勧めいたします。マッキンゼーなどもデジタル部門を作るなどしておりますが、少々領域をカバーしている程度の場合には入れないようにしております。
■大手企業向けにコンサルティングサービスを提供しているファームに限定
大企業向けのコンサルティングを行う主要コンサルティングファームに限定し、かつブティック系コンサルファームは掲載をしておりません(ブティック系コンサルについては別コンテンツにてまとめております)。
※当カオスマップを転載及び使用する際には、必ず出典として当記事のURLを載せていただくようお願い致します。
※当カオスマップ記載のロゴにつきましては、事前に各社様に事前許諾を得ていないものがございます。当マップへの掲載に問題がある場合は、大変お手数ですが「お問い合わせ」 よりご連絡ください。速やかに修正させていただきます。
なお、本マップで大分類と中分類でわけているコンサルティングの7つの領域については、当サイト別記事にて詳しく解説をしておりますので、こちらも併せてご確認下さい。
【考察】2024年におけるコンサル業界の現状と今後
①業界成長鈍化:それでも10%の成長率
2010年代後半以降、急拡大をしてきたコンサル業界ですが2023年後半より、成長度合いも落ち着きを見せてきています。2023年12月期や2024年4月期決算となる上場ファームの決算情報を見ても、各社増収増益であるものの成長率は鈍化しています。具体的には、FY2022決算時の各社の成長率平均が15-16%であったのが、FY2023においては10%前後と伸び率が逓減している状況です。
当メディアでは、コンサル業界の市場規模将来予測(2023‐2030)について公開しており、日本のコンサルティング市場規模の成長がマイナスに転じる時期は近いのではないかとの予測をしております。主に、日本GDPの停滞・世界経済の変化・急成長した組織の歪み(次項にてご紹介)の3点を変化をもたらす要因として挙げております。
②採用動向
昨年2023年初頭にグローバルファームにおける人員削減のニュースが立て続けに届きました。当時日本国内において、影響は軽微なものの遅れて影響がくるのではないかと言われておりましたが、2023年後半より実際に変化が出てきました。外資大手を中心に採用活動を絞り始めたのです。コンサル未経験候補者をどんどん採用する売り手市場基調はなくなり、候補者に求める人材要件も相応に高くなってきています。元々優秀な人材が活躍する業界ですから、就職・転職難易度はさらに難しい業界となっています(是正されただけとも言えます)。
ここ数年、外資大手が引き上げる様な形で業界全体の年収レンジが上がり、日系事業会社との給与レンジ乖離が大きくなり、現在コンサルファームに在籍している人からすると年収をup or stayさせようとするとコンサルファーム以外に転職しづらい状況も出てきています。コンサル業界に入ってくる人材も減る傾向にあり、逆に出ていく人材も増えづらい状況と言えます。
全体でみると人材の流動性が低くなっているとも捉えることができ、業界のみならず日本経済の向上に影響を与えなければ良いのだがと思うところです。
③生成AI
AI×コンサルティングのトレンドは以前からありましたが、2024年になってからは明確に一大トピックとなりました。これまでは実現可能性の検証などの支援フェーズが多かったのですが、実際のビジネス変革に生成AIを取り込むための支援が増えてきている印象です。
コンサルファーム単体だけでは取り組みに限界があり、グローバルでは生成AIやAIプラットフォームへの投資や提携が活発化してきています。
毎週、毎月何かしらコンサル×AIのニュースリリースが出るため、本年5月に月刊生成AIシリーズといった形でトピック化しております。
④コンサルファームと事業会社やSIとの協業や提携
ボストン コンサルティング グループと伊藤忠商事の新会社設立や、アビームコンサルティングと住友商事の新会社設立が立て続けに発表され、記憶に新しいところではドリームインキュベータと電通総研の提携なども発表がありました。
これまで、コンサルファーム各社は提供するコンサルティングサービスの領域を広げて拡大を続けてきましたが、提携を通してクライアント獲得と安定化を狙っていると推測することができます。事業会社側からしても、コンサルティングでクライアントに切り込めることにより、ビジネスチャンスの拡大を期待しているものと思われます。
次はどこのコンサルファームが?と気にはなりますし、コンサル同士の統合も起きるのではないかと気になるところです。実際に2023年にはキャップジェミニがビッグツリーテクノロジー&コンサルティングを買収したのは記憶に新しいところです。
カオスマップのコンサル業界分類と主要ファーム一覧
本カオスマップにおける領域の分類と主要ファームをご紹介します。コンサルティング7領域と、総合的にコンサルティングを行う総合系を加えた8カテゴリとなっております。
各社表記は、株式会社や合同会社などの表記は除き、日本語での正式名称に続き英語での正式名称、略称(一般的に略称が無い場合は省略)としております。また、日系ファームか外資系ファームであるかをわかるように日系ファームの企業名の前に★マークを付けております。なお、一般的には外資系と認識されているものの、会社の資本そのものは内資であるケースがありますが、今回はグローバルで存在する場合は外資として区別しております。
総合系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
【Big4】PwCコンサルティング | PwC Consulting |
【Big4】EYストラテジー・アンド・コンサルティング | EY Strategy and Consulting/EYSAC |
【Big4】KPMGコンサルティング | KPMG Consulting |
【Big4】デロイト トーマツ コンサルティング | Deloitte Tohmatsu Consulting/DTC |
アクセンチュア | Accenture Japan/AC |
★ クニエ | QUNIE |
★ ベイカレント・コンサルティング | BayCurrent Consulting |
★ 日立コンサルティング | Hitachi Consulting/HCJ |
★ アビームコンサルティング | ABeam Consulting/AB |
★ シグマクシス | SIGMAXYZ/SX |
★ ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ | Cambridge Technology Partners/CTP |
★ コダワリ・ビジネス・コンサルティング | Codawari Business Consulting |
戦略系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
ベイン・アンド・カンパニー | Bain & Company |
マッキンゼー・アンド・カンパニー | McKinsey & Company/McK |
ボストン・コンサルティング・グループ | Boston Consulting Group/BCG |
A.T. カーニー | A.T.Kearney/ATK |
ローランド・ベルガー | Roland Berger |
アーサー・D・リトル | Arthur D Little JAPAN/ADL |
★ ドリームインキュベータ | Dream Incubator/DI |
★ NTTデータ経営研究所 | NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING |
★ FIELD MANAGEMENT STRATEGY | – |
★ コーポレイト ディレクション | Corporate Directions/CDI |
業務(ビジネス)系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
キャップジェミニ | Capgemini Japan |
★ レイヤーズ・コンサルティング | Layers Consulting |
★ INTLOOP | - |
★ スカイライト コンサルティング | Skylight Consulting |
日本アイ・ビー・エム | IBM |
業務(IT)系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
日本タタ・コンサルタンシー・サービシーズ | Tata Consultancy Services Japan/TCS |
★ TIS | – |
★ フューチャー | Future |
★ Ridgelinez | – |
アバナード | Avanade |
★ シンプレクス | Simplex |
★ ビジネスブレイン太田昭和 | BUSINESS BRAIN SHOWA-OTA/BBS |
★ ウルシステムズ | UL Systems |
★ 電通総研 | DENTSU SOKEN |
★ ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング | BTC Corporation/BTC |
★ コアコンセプト・テクノロジー | Core Concept Technologies/CCT |
★ エル・ティー・エス | LTS |
シンクタンク系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
★ 野村総合研究所 | Nomura Research Institute/NRI |
ガートナー ジャパン | Gartner |
★ 三菱総合研究所 | Mitsubishi Research Institute/MRI |
★ 富士通総研 | FUJITSU RESEARCH INSTITUTE/FRI |
★ 日本総合研究所 | The Japan Research Institute/JRI |
★ 大和総研 | Daiwa Institute of Research/DIR |
★ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | Mitsubishi UFJ Research and Consulting/MURC |
FAS(M&A)系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー | Deloitte Tohmatsu Financial Advisory/DTFA |
PwCアドバイザリー | PwC Advisory |
EYストラテジー・アンド・コンサルティング | EY Strategy and Consulting/EYSAC |
KPMG FAS | - |
★ YCP Solidiance | - |
フーリハン・ローキー | Houlihan Lokey |
★ エスネットワークス | ES NETWORKS |
★ レコフ | RECOF |
★ クロスポイント・アドバイザーズ | Crosspoint Advisors |
FAS(事業再生)系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
★ 経営共創基盤 | Industrial Growth Platform/IGPI |
★ フロンティア・マネジメント | Frontier Management |
★ 山田コンサルティンググループ | YAMADA Consulting Group |
アリックスパートナーズ | AlixPartners |
ロングブラックパートナーズ | Long Black Partners/LBP |
組織・人事系コンサルティングファーム
企業名(日本語表記) | 企業名(英語表記/略称) |
マーサー ジャパン | Mercer Japan |
コーン・フェリー・ジャパン | Korn Ferry |
エーオンジャパン | Aon |
ウイリス・タワーズワトソン | Willis Towers Watson/WLTW |
コンサルファームにおけるシステム構築支援について
コンサルティングとIT、特にシステムとは切っても切り離せないものとなっていますが、システム構築も実際に支援するか否かはファームによって分かれます。
今回、システム構築を行うかどうかについてカオスマップを使って切り分けをしてみました。コンサル領域と同じく、明確に切り分けをすることは難しく、あくまで参考程度に見ていただくと良いかと考えます。
なお、子会社やグループ会社がSI機能を担っているケースもあり、その場合はシステム構築を行う側に入れています。一方でファームの親会社もしくは親会社のグループ会社がSIを担っている場合は入れておりません。
■システム構築も手掛けるファーム群
所謂上流工程から一貫して導入支援、場合によっては運用まで担うことができ、いかなるクライアントニーズにも応えられるファーム群と言えます。
■システム構築までは手掛けないファーム群
こちらはピュアコンサルと表現しても良いファーム群です。
ITコンサルをやったとしても、構想策定やIT企画立案支援などの上流工程までとなります。一切やらないファームもあれば、開発や導入支援を一部やっているファームもありますので、大まかなものと捉えていただければと思います(開発PJTのクライアント側PMO支援など)。
システム構築まで幅広くやっていないわけですが、裏返せばシステム構築ありきのコンサルティングにはならないとも言うことができます。
ブティックコンサルティングファーム
今回のカオスマップで取り上げたファームは主要ファーム中心ですが、コンサル業界にはブティック系コンサルティングファームも数多く存在します。
ブティック系ファームについては別記事でまとめておりますので、こちらもご確認下さい。
まとめ
業界地図という観点で見ると大きな動きはないコンサル業界ですが、全体規模感などは頭打ち感が出てくるなど、2023年までと比較すると潮目は変わってきています。そんな中大手ファームをはじめAI活用や提携などを通じて、さらなる拡大を狙っている様相も伺うことができます。
本コンテンツの後半に、システム構築の有無で切り分けたカオスマップをご紹介しましたが、コンサル会社としてクライアントに提供できるサービスの範囲を拡大させていくのは、規模を規模で担保していく戦略としては正解なのかもしれません。一方で本稿では便宜上ピュアコンサルと表現したコンサルファーム群は、比較的規模が小さいところが多く、コンサルティングサービスの質や専門性といったところで差別化を図り、生き残りをかけていくのではないでしょうか?大手が小さめのファームを吸収することもあり得るでしょうし、今後も業界動向には注目です。
なお、7つのコンサルティング領域の違いや、コンサル業界全体を把握したい方は「図解即戦力 コンサルティング業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」をぜひお読みください。Big4やMBBなどその他の主要コンサルティングファームにはどのような特徴があるのかなどを分かりやすく解説するほか、コンサルティング業界の市場規模や動向、コンサルタントのキャリアパスなど、コンサル業界にまつわるあらゆる情報を網羅的に明示しております。
▶▶弊社では、現役のコンサルタントからフリーのコンサルまで、ステージにあった働き方をご支援します。こちらからお気軽にご相談ください。
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執筆者
- アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。
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