
コンサルファームの子会社が急増する背景とは?アクセンチュアやBCGなど主要ファームの子会社一覧も掲載

IT支援から共創まで:総合・戦略系ファームが展開する専門特化型企業とは
近年、コンサルティングファームが子会社を設立するケースや、事業会社と合弁会社やジョイントベンチャー(JV)を立ち上げるケースが増えています。総合系や戦略系ファームでは、IT構築や運用支援、専門領域特化などの事業を子会社として切り出して展開しています。
本記事では、こうした傘下企業の一部を紹介するとともに、それぞれの設立形態(子会社・合弁会社・JV)ごとに、その戦略的意図を考察します。
目次
総合系・戦略系ファームが抱えている企業
今回の調査では、コンサルファームが直接保有・出資している企業を対象とし、Big4におけるメンバーファームなどのグループ企業は対象外としています。
筆者は当初、Big4各社が多く掲載されると予想していましたが、実際にはグループ企業は多いものの、コンサルティング機能を持つ法人格配下に属すると明示されていたのはデロイトのみとなりました。( Impact Report 2024 のデロイト トーマツ グループ内法人と組織構成に記載されている、デロイト トーマツ コンサルティング配下の4社)
一覧表では、子会社と合同会社/JVの2つの形態に分類しております。なお、本記事ではすべての傘下企業を網羅しているわけではありませんので、あらかじめご了承ください。
■総合系コンサルファーム
デロイト トーマツ コンサルティング
形態 | 会社名 | 概要 |
子会社 | デロイト トーマツ アクト | 2018年に株式会社エー・フレームから買収。企業のデジタル改革を支援し、ITシステムの導入を一気通貫でサポート。 |
子会社 | デロイト トーマツ ノード | 2021年に設立。ソフトウェアエンジニアリングやクラウド導入ビジネスを展開。 |
子会社 | デロイト トーマツ デザイン メタ・マニエラ | 2024年にメタ・マニエラ社を買収。グラフィックデザインやUX/UIデザインなど、クリエイティブ領域の専門性を持ち、Deloitte Digitalブランドの一翼を担う。 |
子会社 | デロイト トーマツ スペース アンド セキュリティ | 2023年に設立。宇宙・安全保障分野に特化し、官公庁や企業向けに高セキュリティ環境下で専門的なサービスを行う。 |
アクセンチュア
形態 | 会社名 | 概要 |
合弁会社/JV | シオノギビジネスパートナー | シオノギ製薬との合弁会社。2023年にアクセンチュアが80%出資するグループ会社となった。主にシオノギ製薬の業務支援を行う。 |
合弁会社/JV | ネオアーク | 2024年に設立したコカ・コーラ ボトラーズジャパングループとの合弁会社。コカ・コーラ ボトラーズジャパングループの業務の効率化を支援。 |
合弁会社/JV | クボタデータグラウンド | 2022年にクボタとアクセンチュアの合弁会社で、クボタグループのDXを推進し、食料・水・環境分野の社会課題解決を支援。 |
合弁会社/JV | 資生堂インタラクティブビューティー | 2021年に資生堂と設立した合弁会社。資生堂のEC、CRM、マーケティング領域の高度化を推進。 |
合弁会社/JV | SUMIKA DX ACCENT | 住友化学株式会社と共同出資して設立した合弁会社。住友化学のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速するための中核的な役割を担う。 |
合弁会社/JV | K4 Digital | 関西電力とアクセンチュアによる合弁会社。電力業界のデジタルビジネス(顧客接点、業務効率化、データ利活用など)を推進。 |
合弁会社/JV | ARISE analytics | KDDIとアクセンチュアの合弁会社。データ分析(アナリティクス)を用いて、通信事業などにおける業務改善や新サービス創出を支援。 |
ベイカレント
形態 | 会社名 | 概要 |
子会社 | ベイカレント・テクノロジー | 持ち株会社への移行するに伴い、主力事業であるコンサルティング事業から分割する形で設立。SI事業を展開。 |
アビーム
形態 | 会社名 | 概要 |
合弁会社/JV | GXコンシェルジュ | 住友商事と設立した合弁会社。企業や組織のグリーントランスフォーメーション(GX)を支援。 |
合弁会社/JV | 住商アビーム自動車総合研究所 | 住友商事と設立した合弁会社。自動車業界向けに調査・コンサル・研究支援を行う専門機関。 |
シグマクシス
形態 | 会社名 | 概要 |
子会社 | シグマクシス・インベストメント | シグマクシス・ホールディングスの100%子会社。コンサルティング事業をシグマクシスが担い、当該法人は投資事業全般を行う。 |
■戦略系ファーム
ボストン・コンサルティング・グループ
形態 | 会社名 | 概要 |
合弁会社/JV | I&Bコンサルティング | 2023年に伊藤忠商事と設立した合弁会社。財務戦略・資本政策・M&A等を支援。 |
ドリームインキュベータ
形態 | 会社名 | 概要 |
子会社 | DIソーシャルインパクトキャピタル | SIB(ソーシャルインクルージョンボンド)ファンド運営。 |
子会社 | Next Rise ソーシャルインパクト推進機構 | SIBを活用した事業推進。 |
コーポレイトディレクション
形態 | 会社名 | 概要 |
子会社 | CDIメディカル | 2005年に設立したCDI(コーポレイトディレクション)の医療・ヘルスケア専門部門。病院や製薬企業への戦略コンサルティングを支援。 |
子会社 | アクティベーションストラテジー | 旧CDIソリューションズ。BPR(業務改革)及びIT(情報システム)領域のコンサルティングを行う。 |
設立形態別に見るコンサルファームが傘下を持つ理由
■ 子会社化の狙い:スピードと組織構造の最適化
企業が子会社化を立ち上げる一般的なメリットとしては、自社の方針で自由に経営でき、かつスピーディな事業展開ができることがあげられますが、コンサルファームが子会社化するのは大きく2つの理由が考えられます。
1つは、「立ち上げから短期間で事業拡大を実現するための買収」です。たとえば、デロイト トーマツ アクトやデロイト トーマツ デザイン メタ・マニエラなどは、既存の外部企業を取り込み、自社ではゼロから構築するには時間がかかる業務運用支援やDX実行支援機能を短期間で獲得しました。
もう1つは、「異なる事業領域を切り分け、組織や人事の面で柔軟な運営を図るための独立体制」です。デロイト トーマツ ノードやベイカレント・テクノロジーのように、技術系の専門組織を別会社として設立するケースがこれにあたります。こうすることで、親会社とは異なるカルチャーや人事制度を導入しやすくなり、専門性の強化にもつながります。
シグマクシス*1やドリームインキュベータのように投資業務を子会社として切り出すケースもあります。
■ 合弁会社/JVの狙い:重要クライアントとの良好な関係を維持する、複数社の強みを融合
合弁会社を設立する一般的な理由としてコストやリスクを分担することです。しかし、コンサルファームが設立する合弁会社で特徴的なのが、クライアント企業と共同で設立するケースです。これは、長期的なパートナーシップを築きながら、互いの利益を最大化する狙いがあると考えられます。
例えば、アクセンチュアの合弁会社は重要クライアントとの出資が多く、業務効率化やIT導入などの実行支援をクライアント側の“内側”に入り込んで行える体制を構築しています。クライアントにとっては本業への集中がしやすくなり、コンサル側にとっては安定的な関係性の中で深い価値提供が可能となります。
最近では、複数企業が対等に出資し、共同で新たな事業機会を追求するジョイントベンチャーも増えています。これは、単独では難しい取り組みを、互いの強みを活かして実現しようとする試みです。
コンサルファームにおいてもジョイントベンチャーは増加しており、例えば伊藤忠と共同でジョイントベンチャーを設立したBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)や住友商事とジョイントベンチャーを設立したアビームコンサルティングでは、業界横断的な知見や最新テクノロジーの融合を図ることで、新たなビジネスモデルの創出に挑戦しています。
まとめ
ここまで、各コンサルファームが抱えている子会社・合弁会社/JVを整理し、それぞれの戦略的な狙いについて考察してきました。
ファームごとに異なる狙いが見えてきて、非常に興味深い傾向が伺えます。今後、どのような企業を子会社化するのか、またどのような企業と共同出資していくのか、その動向を引き続き注視していきます。
[v310]
執筆者
- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社
-
2025年入社の新人アナリスト。
学生時代には、当メディア運営企業コダワリ・ビジネス・コンサルティングでインターンを経験する一方で、学生団体でも積極的に活動。これらの経験を通じて鍛えた“主体性”を活かして、一人前のコンサルタントになれるよう日々挑戦と失敗を繰り返している。
現在は外国の方とシェアハウスで暮らしながら、日々の会話を通じていろんな価値観に触れ、視野を広げている。
執筆者
- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社
-
2025年入社の新人アナリスト。
学生時代には、当メディア運営企業コダワリ・ビジネス・コンサルティングでインターンを経験する一方で、学生団体でも積極的に活動。これらの経験を通じて鍛えた“主体性”を活かして、一人前のコンサルタントになれるよう日々挑戦と失敗を繰り返している。
現在は外国の方とシェアハウスで暮らしながら、日々の会話を通じていろんな価値観に触れ、視野を広げている。