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PRIDE指標受賞のコンサルファームと、LGBTQ+への取り組みを紹介
コンサル業界で進むインクルージョン&ダイバーシティ。性的マイノリティへの取り組みが評価されるファームとは?
先日、work with Pride2024カンファレンスが開催され、「PRIDE指標2024」と「レインボー認定」の結果が発表されました。今回は、LGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標」を獲得しているコンサルファームとその取り組みをご紹介します。
目次
PRIDE指標とは
PRIDE指標とは、LBGTQ+*1などの性的マイノリティが働きやすい職場づくりを日本で実現するために、一般社団法人work with Pride(wwP)が2016年に策定した指標です。取り組みを評価された企業は、ゴールド・シルバー・ブロンズの3つのランクで認定され毎年発表されています。また、2021年からは他セクターとの協働を評価するレインボー認定も新設されました。
PRIDE指標は、以下の5つの項目で評価されます。
・Policy(行動宣言)
・Representation(当事者コミュニティ)
・Inspiration(啓発活動)
・Development(人事制度・プログラム)
・Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)
PRIDE指標を受賞している企業は、多様性のある職場や社会づくりに積極的に貢献している企業だといえます。以下より「PRIDE指標 全文」を参照しながら、PRIDE指標の5つの項目を1つずつ解説します。
Policy(行動宣言)
Policy(行動宣言)とは、方針の策定と社内外への宣言のことです。
会社としてLGBTQ+等の性的マイノリティ(以下LGBTQ+)、およびSOGI*2に関する方針を明文化し、それをインターネットなどで社内外に広く公表しているかを評価します。
Representation(当事者コミュニティ)
Representation(当事者コミュニティ)では、LGBTQ+当事者・アライ(Ally、支援者)に限らず、従業員がLGBTQ+やSOGIに関する意見や要望を言える機会を提供しているかを評価します。
この指標は、以下の6つの項目にしたがって評価されます。
- LGBTQ+やSOGIに関する意見交換等ができる社内のコミュニティがあるか
- 従業員が主体となってLGBTQ+やSOGIに関する活動ができる社内のコミュニティがあるか
- LGBTQ+を支援する「アライ(Ally、支援者)」という立場の人々を増やしたり、顕在化したりするための取り組みを行っているか
- 社内外を問わず、当事者が性的指向または性自認に関連した相談をすることができると明示された窓口を設け、社内に向けて公開しているか
- 無記名の意識調査でLGBTQ+当事者従業員の存在や、意見・要望等をプライバシーに配慮した形で把握できるようにしているか
- 自社グループ以外の他企業との共同コミュニティに参加しているか
Inspiration(啓発活動)
Inspiration(啓発活動)とは、従業員に向けた啓発活動を行っているかを評価する指標です。
従業員に対し、過去2年以内にLGBTQ+やSOGIへの理解を促進するための取り組みを行っているかという観点で評価します。ほかにも「管理職への研修」や「グループワーク等の演習が含まれているか」など合計16の項目があり、該当する項目の数によって評価点数が加算されます。
Development(人事制度・プログラム)
Development(人事制度・プログラム)とは、同性のパートナーがいる従業員に対しても、人事制度を公平に適用しているかどうかを評価する指標です。
対象となる人事制度は、以下のようなものがあります。
・結婚、出産、育児などの休暇
・支給金(慶事祝い金、出産祝い金、家族手当など)
・赴任に関する手当
・その他福利厚生(社宅、家族割など)
またトランスジェンダーについては、以下の施策をはじめとする取り組みがあるかどうかも評価の対象です。
・本人が希望する性で性別を扱う
・性別適合手術やホルモン治療時の就業継続サポート
・トイレや更衣室などのインフラ整備
Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)
Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)では、LGBTQ+への理解を促進するため、社会貢献活動や渉外活動を行っているかを評価します。
該当する社会貢献活動には、以下のようなものがあります。
・LGBTQ+関連イベントの主催、協賛
・従業員に対する、LGBTQ+関連イベントへの参加の呼びかけ
・LGBTQ+の学生に対する就職説明会、セミナーの主催、協賛
*1LGBTQ+とは、Lesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bisexual(両性愛者)、Transgender(心と体の性が一致しない人)、Queer/Questioning(性自認や性的指向が定まらない、定めない人)/+(そのどの言葉でも表現しきれないセクシュアリティを持つ人)などの多様な性の在り方をもつ人たちのこと。wwPでは性的マイノリティの総称として使用。
*2SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向) and Gender Identity(性自認)の頭文字。
~コラム~
性的マイノリティへの取り組みが広がる中で、個別事例に沿った深い理解や細やかな対応を求められるケースが増えています。昨今注目を集めた、経産省におけるトランスジェンダー女性の女性トイレ使用制限撤廃はその一例と言えるでしょう。
この事例では、経産省に勤務するトランスジェンダー女性が、職場の女性トイレの使用制限に対し国に慰謝料の支払いを求め、東京地裁、東京高裁、最高裁を経て、最終的に国の対応を違法とする判決が出ました。
本件では、女性ホルモンの投与などの治療や性暴力のリスクが低いという医師の判断、また職場内で明確に反対を示す女性職員が確認されなかった点など、個別の事情が重視されています。また、判決文では、訴えから5年間改善への取り組みを推進しなかった経産省の姿勢が指摘されています。そのため、今後この判決が一般的な基準となるわけではないでしょう。
しかし、多様性を尊重しながら誰もが安心して働ける職場環境を実現する上で、この事例から学ぶ点は多いのではないでしょうか。企業の人事担当者だけでなく、就職や転職の活動を行う求職者も、企業の取り組みや姿勢をしっかり確認しておくことが重要だと言えます。
主なコンサルファームのPRIDE指標2024受賞結果
「PRIDE指標2024」では、主要なコンサルファームでは計12社が受賞しており、いずれも最高評価であるゴールドを獲得しています。本記事では、ファーム5社を取り上げ、LGBTQ+への取り組みについても紹介致します。
なお、「PRIDE指標2024」は、2024年7月1日(月)~8月31日(土)の期間に応募を受付け、取組評価対象期間を2024年1月1日(月)~12月31日(火)の12ヵ月間とするものとなります。2024年は全体では過去最多の463社(グループ・複数社連名の法人では968社)から応募がありました。
<PRIDE指標2024レポート>
◆PwC Japanグループ
PwC Japanグループは2024年、PRIDE指標の最高ランクであるゴールドを受賞しており、2018年の受賞から数えると7年連続での受賞です。また国や自治体、NGO・NPOと協働してLGBTQ+支援に取り組む企業を評価する「レインボー認定」を4年連続で取得しています。
過去、2022年はゴールドとレインボー認定のほかに、企業の新しいアイデアや企画を評価する「ベストプラクティス」も受賞しています。
(参照:PwC Japanグループ、LGBT+インクルージョンに関する取り組み評価 「PRIDE指標2022」において、最高位「ゴールド」、「レインボー」および「ベストプラクティス」をトリプル受賞)
PwC JapanグループにおけるLGBTQ+への取り組み
PwC Japanグループでは「LGBT+インクルージョン」と題してLGBTQ+への支として以下のような取り組みを行っています。
- 事実婚や同性婚に対する、祝い金と結婚休暇の付与
- LGBT+の基礎知識やSOGIハラ(ハラスメント)に関する学びの機会の提供
- 当事者コミュニティやアライネットワークの設立
上記以外にも「関西レインボーパレード」や「東京レインボープライド」のようなイベントに協賛し、社外でのLGBTQ+支援も積極的に行っています。
(参照:LGBT+インクルージョン)
◆EY Japan
EY Japanは、2024年にゴールドとレインボーを受賞しました。2017年から2022年まで8年連続でゴールドを、2021年から20224年までの4年連続でレインボーを受賞しています。過去の審査では、EY Japanの以下のような活動が評価されています。
- 同性パートナーを配偶者と同等と認め、育児・介護・看護の休暇/休業、慶弔金など各種社内規定の適用対象としている
- LGBT+当事者とアライによる社員コミュニティ「Unity」が社内外に積極的な啓発活動を行っている
- トランスジェンダーをはじめとする誰もが利用しやすいトイレのデザインを「Unity」が提言し、EYオフィス内だけではなく、入居しているビル全体で採用されている
EY JapanにおけるLGBTQ+への取り組み
EY Japanでは、LGBTQ+への取り組みとして、以下のような活動を行っています。
- 偏見や差別をなくすための研修を実施
- 当事者とアライのネットワーク「Unity」の形成
- 「Unity」のミーティングにCEOが参加
- ダイバーシティに取り組む企業のリクルートイベント「RAINBOW CROSSING TOKYO」に参加
EY Japanでの取り組みは、LGBTQ+の社内ネットワーク「Unity」を中心として積極的な活動を行っているという点が特徴的です。
◆デロイト トーマツ
デロイトトーマツは2024年にPRIDE指標のゴールドを受賞しレインボーも獲得しました。ゴールドは2018年から7年連続、レインボーは2年連続となります。
デロイト トーマツにおけるLGBTQ+への取り組み
デロイトトーマツでは、LGBTQ+への取り組みとして以下のようなものを行っています。
- 同性パートナーを配偶者として定義
- ホルモン治療や性別適合手術中の有給休暇制度
- 誰でも使用できるトイレなどのインフラ整備
- グループ全員への研修実施
- 有志によるアライネットワーク形成
上記のような社内での取り組みのほかにも、社外での以下のような活動にも力を入れています。
- 各種発行・発信物を通じたLGBT+インクルージョンの推進
- 2018年より東京レインボープライドに参加
(参照:LGBT+ / アライシップ)
◆アビームコンサルティング
アビームコンサルティングは2024年、PRIDE指標のゴールドを受賞しました。2020年から数えて5年連続の受賞となります。受賞にあたり、アビームコンサルティングの以下の取り組みが評価されました。
- アライのコミュニティ形成
- LGBTQ+への理解を含むダイバーシティ研修の実施
- 休暇・休業などの人事制度について同性パートナーを持つ社員にも適用
- 相談窓口の設置
アビームコンサルティングにおけるLGBTQ+への取り組み
アビームコンサルティングのLGBTQ+への取り組みには、以下のようなものがあります。
- LGBTQ+理解促進のためのセミナー開催
- LGBTQ+をテーマにした映画上映会やトークセッション開催
- アライを増やすためのプロジェクト「LGBT-Allyプロジェクト」に参加、協賛
社内の制度を整えるだけでなく、映画上映会やトークセッションで風土の醸成を行っている点が特徴です。
(参照:Diversity & Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)
◆アクセンチュア
アクセンチュアは、PRIDE指標2024年でゴールドとレインボーを受賞しており、ゴールドは2016年から9年連続の受賞、レインボーは2023年に続き2年連続の受賞となります。
PRIDE指標以外では、イギリスのINvolve社が毎年公開している、LGBTQ+のリーダーやアライを選出したリスト「Outstanding LGBT+Role Model Lists」の2024年度版の「Advocates Role Models」部門にて、アクセンチュア・ジャパンから1名選出されています。
アクセンチュアにおけるLGBTQ+への取り組み
アクセンチュアでは、LGBTQ+をはじめとする様々な社員にとって、働きやすく能力を伸ばせる職場づくりをするため、以下のような取り組みを実施しています。
- ネットワーキング機会の提供や、キャリア構築などを支援する専門的なトレーニング
- インクルーシブな方針
- SOGIによる差別を一切禁じる採用、昇進、定着のガイドライン
- 医療プランへの平等なアクセスと健康保険への加入*
- 世界45カ国に90以上の社員ネットワークを持つグローバルなコミュニティ
*法的に認められている等の諸条件あり
(引用:Pride at Accenture)
◆その他の受賞企業
上記で紹介した5社以外にも、PRIDE指標2024でゴールドを受賞しているコンサルティングファームを以下に紹介します。
- KPMG
- マッキンゼー・アンド・カンパニー
- ボストンコンサルティンググループ
- 日本IBM
- 大和総研
- 電通デジタル
- TIS
◆レインボー認定企業
他セクターとの協働を評価するレインボー認定では、5社が獲得となっています。
- アクセンチュア
- PwC Japanグループ
- デロイト トーマツ グループ
- EY Japan
- 日本IBM
まとめ
RIDE指標2024において、多くの大手コンサルファームがゴールドを受賞しています。数年連続で受賞しているファームも多く、コンサル業界全体でLGBTQ+を含むダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みが一般的なものとなっています。転職や就職時に、各社がどの様な取り組みをしているのか確認をし、参考にしてみてはいかがでしょうか。
▶▶当メディア運営企業では、コンサル業界に転職したい方向けのキャリア支援サービス「コンサルキャリア」を提供しています。希望に合うファームとのマッチングを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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執筆者
- 学生時代に体育会で身につけた体力と精神力を糧に、アナリスト職として日々奮闘中。最近の趣味は業務プロセス設計。プライベートの時間は、ジムにスキーにダンスにテニスとアクティブ三昧で、「楽しく痩せる」をモットーにダイエットに励んでいる。
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