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ITコンサルとは?を活用シーンと共に徹底解説!|企業の課題とITの橋渡しを担う「IT領域」 ‐コンサル7つの領域シリーズ‐
コンサルティングファームが手掛ける「7つの領域」を解説するシリーズ。第三弾は、ニーズも規模も拡大を続ける<IT領域>を解説します。
コンサルの仕事内容はクライアントの課題を解決に導くことですが、得意とするコンサルティングテーマや対象によって、その領域は大きく7つに分類することができます。
今回は、「IT」領域について、事例を交えて詳しく解説していきます。
= コンサル全7領域について、詳しくはこちら =
コンサルティングファームが手掛けるテーマを分類|コンサル7つの領域
目次
ITコンサルとは
現代のビジネスにおいて、ITは必要不可欠である一方で、戦略や業務を考える上で、ITを活用して何を実現するかというのは難易度が高く、専門性が求められます。更に昨今、企業はIT投資を強めており、企業課題解決とITによる成長戦略の両分野を担うITコンサルのニーズは高まっています。
IT領域のプロジェクトは期間が長く、体制も大規模になるので、マーケット規模も人数も、コンサルが手掛ける7つの領域の中で最大となっています。
IT領域では、企業が抱える様々な課題を「IT」を武器として解決していきます。あくまでITは武器であり、目的は課題を解決すること。「本当に取り組むべき課題は何なのか」「そのためにITを活用するべきなのか」「活用するとしたらどんなシステムなのか」「そのシステムはどの企業と一緒に作り上げていくべきなのか」といった部分から検討していきます。検討の結果、システムは不要というのも立派な結論となります。
例えば、クライアント企業から「会計システムを刷新したい」という依頼があったとします。ITコンサルは、クライアントにとって、そのシステムが必要か否かの検討を行い、必要な場合、どのような体制でどのようなスケジュールで構築するかといった検討を行います。検討の結果、「費用対効果や現実性を加味し、システム刷新ではなく業務改革でよいのでは?」という提案をする場合もあります。
また、実際にシステムの開発工程に入ってからも、漏れや要件の誤解がないか、プロジェクトが円滑に進んでいるかなどのチェックの役割を担うこともあります。
さらに、個々のシステム以外にもIT戦略立案やIT組織の構築、ITインフラの整備、プロジェクト管理など、ITが関わるもの全般に対する支援を行います。
ITコンサルタントは、企業が抱えている課題の本質を見極めたうえで、ITによる解決ができるのか否かを検証する必要があります。そのため、様々な領域に対する理解が求められます。クライアントと対等に議論を重ね、問題解決に臨むには、財務・経理などのバックオフィス系の部門や、マーケティングや事業戦略といった企画系の部門など、ほかの分野の業務知識を理解していなければならないのです。
加えて、クライアント担当者の中にはITに対する理解度が高くない人も多くいます。そのような人とも円滑に業務を進められる高いコミュニケーション能力も求められます。
ITコンサルタントとSEの違い
システムエンジニア(System Engineer)の略称であるSEの役割は、システムの大局を捉え、実際に作り上げることです。一般的には、導入が決定したシステムの要件を整理し、設計・開発・運用を行います。
一方、ITコンサルタントの役割は、前述のとおり企業が抱える様々な課題を「IT」を武器として解決していくこと。ITはあくまで「武器」ですから、企業の抱える課題を本質的に追及して、解決策の一つとしてITを有効活用します。
つまり、より分かりやすくするために、誤解を恐れず表現すると、「SE」は「武器」の型をクライアントに運用してもらえるように磨きをかけ、「ITコンサルタント」はクライアントの課題に合った「武器」の型を選定するというイメージです。
双方綿密にコミュニケーションを取りながら、お互いの視点を生かして、本質的な問題を解決できるシステムを作り上げます。
最近では、コンサルタントとSEのスムーズな連携を強みとして、IT領域の案件獲得競争をリードするため、自社内に開発部隊を持つ総合系コンサルティングファームが増えています。(コンサルファームに入社したはずなのに、開発部隊に配属され思っていたのと違うとなるのはあるあるです)
ほかにも、ITシステム開発会社には導入コンサルタントと呼ばれるポジションがあります。この場合、自社製品に長けたコンサルタントという意味合いが強く、SEとの違いは無いに等しいです。製品ありきの導入になるので、ITコンサルとは抜本的なアプローチが異なり、言わば「武器」が固定されてしまっている状態です。
IT領域は広く深く1日にしてならず
総合系ファームやITコンサルタントファームでも、最初はSE業務やプログラマ業務からアサインされることがあります。中身を理解していたほうが、見識も広くなり、現場の苦労も把握できるため、将来的にITコンサルとして活躍する際に現実的なIT戦略や計画を立案できるからです。
新卒からコンサルファームに入社し意気揚々としている人は、「システム開発をやりたくて入社したわけじゃない。」と違和感をもつかもしれません。しかし、このようなキャッチアップ期間(修業期間?)は必要とも言えるでしょう。特に新卒の場合は、ベースが無い分、他社へコンサルできるような領域も皆無であり、IT領域は前述の通り広く難解なポイントも多いためです。
【IT領域ピクトグラム】「プロセスをデジタルで最適化する技師」
企業の課題を前に、戦いを有利に進めるために最適な「武器(=IT)」を選定・導入します。
また、IT戦略やIT組織の構築、ガバナンス強化など「IT」を使って様々な課題を解決します。
ITコンサルの代表的なテーマと活用シーンIT戦略策定支援
1.IT戦略策定支援
└CIO支援
└ITロードマップ策定
IT戦略策定支援では、企業戦略にひもづくIT戦略策定支援を通じて、事業価値や利益の最大化を支援します。戦略・業務(ビジネス)コンサルと重なる部分もありますが、ITを用いた改革の色合いが強くなります。
<支援活用シーン>
例えば、大企業では、業務システムが多数存在していたり、ブラックボックス化していたりして、保有するシステムを把握するだけでも困難というケースがよくあります。企業価値を向上させるようなIT戦略を描こうと思っても、どこから手をつければよいのか分からないような状況です。
そのような状況で、ITコンサルは現状を見える化し「ITとして何ができるのか、何をすべきか」といった先を見据えた戦略を提示します。中長期的なIT投資・IT導入計画等の検討を行い、戦略的なITロードマップを策定。最新のIT知見やスキルを使ってCIO支援を行うこともあります。
2.IT組織構築支援
└IT部門の役務分掌
└IT部門組織設計・改革
└要員・育成計画(ローテーションプラン)
└評価指標
企業の様々な組織と横断的に関わるIT部門は調整難易度の高い役割を担っています。また、IT業務をSIerやベンダーに丸投げしようとしても、コストインパクトは非常に大きなものになり得策ではありません。
経営・業務とITが密接になる中、IT人材や組織の力は企業の死活問題といえる程。そのため、IT組織織構築支援の需要は高まっています。
IT組織構築支援では、業務効率性・生産性・人材面での課題を、戦略的なIT組織の構築により解決に導きます。市場トレンドやベストプラクティス、他社の現状等も踏まえた上で支援を行います。
<支援活用シーン>
例えば、経営戦略に「ビジネスにイノベーションをもたらすIT活用」を掲げたものの、自社のIT部門の主な役割はシステム構築や保守・運用だったとします。戦略を実行するためには、今までとは異なるタイプの人材を育成・採用し、新たな組織を構築しなければなりません。
ITコンサルは、IT組織の役割の定義づけを行うほか、組織強化に向けたIT人材の採用手法の検討を行います。それ以外にも、IT人材のキャリアパスや育成プログラムの検討を行ったり、場合によっては、IT子会社の設立やシステム会社の買収などを提案したりすることもあります。
3.ITコストマネジメント支援
└ITコストの見える化
└ベンダ管理、契約プロセスの整備
└ITコスト予実管理実行支援
ITコストマネジメント支援では、ITに関連するコスト管理を主として、関連する契約や管理プロセスの整備の支援なども行います。
大企業ともなると、IT投資予算は年間100億円を超えるようなケースもあり、経営的なインパクトは大きくなります。そのため、短期ではなく、中長期的なIT投資予算を検討していく必要があります。
また、開発の規模感は設計工程を経ないと分からないことが多く、逐次開発費用は変化するため、ITコストの予実管理は重要となります。
<支援活用シーン>
例えば、自社のIT契約を把握しきれないという状況はよくあります。オンプレミスやクラウドが混在する環境で、部署毎に様々なシステムを導入しているほか、運用の一部をアウトソーシングしているケースもあり、企業のシステム運用は複雑化しています。
そのような状況で、ITに関する費用の最適化を行います。問題のあるシステムに関しては、計画の妥当性評価を行ったり、開発業者との契約にテコ入れをしたり、様々な手法でITコストを削減し、最適化を図ります。
4.個別システム開発プロジェクト支援
└システム化構想策定
└プロジェクトマネジメント支援(PMO・PgMO)
└プロジェクト実施計画書の作成
└要件定義等フェーズ支援
企業では会計システムや人事システム、管理システムなど様々なシステムが導入されています。改修や新システムへの切り替えが行われる際に、個別にプロジェクト支援を行います。
ITコンサルは、開発そのものを行うのではなく、構想策定・要件定義といった上流工程のほか、ITマネジメント領域であるプロジェクト実施計画書の策定、PMO・PgMOといったプロジェクト管理を支援します。ITコンサルで群を抜いて需要が大きい支援分野となります(ITコンサルの領域ではなく、ITマネジメントの領域という意見もあります)。
<支援活用シーン>
例えば、新システムに移行するべきか、既存システムを改修するべきかで悩んでいるとします。さらに、システム開発をすすめているものの予定より大幅に進行が遅れているといったケースがあるとします。
そのような状況で、第三者視点を持ち触媒としても機能するITコンサルタントが、プロジェクトの円滑な進行を支援します。詳しくは、こちらの記事をご一読いただければイメージできるかと思います。
5.その他(DX戦略策定・導入支援等)の支援
└DXによるビジネスモデル改革支援(ワークショップ等)
└DXとデジタル化の切り分け、実行支援
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ITコンサルの領域と思われがちです。しかし、DXとは「抜本的にビジネスモデル・仕組みを変える」ことであり、ITを活用して物の売り方レベルから変えていきます。ITのみならず、戦略や業務(ビジネス)領域の深い知見が求められるため、最近では、DXコンサルという用語も使われ始めています。
例えば、契約書を紙からデジタルに移行するというのはただのデジタル化であり、DXではありません。近年のDXブームで、クライアントから「社長がDXを進めろと言ったものの、何をどうしたらよいのか分からない」という問い合わせが増えていますが、DX支援では、既存の枠組みに閉じない検討を行い、戦略・業務・ITといった点で全方位的な支援を推進していきます。
<支援活用シーン>
DXを分かりやすくイメージするために、サンプル品のみを展示していて、その場で商品を購入して持ち帰ることができない家電店舗を例に挙げてみましょう。
通常、ユーザーは店舗で商品を見て、それを購入して持ち帰ります。一方、上記の店舗を利用するユーザーは、その店舗ないしはオンラインで購入し、商品は自宅に配送されます。
この店舗のメリットは、ユーザー側は、実際に店舗で商品を手に取りサイズ等を確認・体験できるので、オンラインだけでは分からない情報を手に入れることができます。その上、商品を持ち帰る労力は不要です。店舗側は、サンプル以外の在庫を配置する必要がなく、SCMの最適化も行えます。
ここまで、IT領域について詳しく解説しました。さまざまな支援テーマをご紹介しましたが、すべてに共通するのは、ITを使って企業や事業の価値を高めること。企業の経営戦略に基づいて最適なシステムを構築し、課題を解決に導きます。時には、既存のビジネスモデルに変革をもたらすことも可能です。ITを通じて経営レベルで貢献できることが魅力だといえるでしょう。
過去にITコンサルの活用メリットについて解説した記事も公開しています。現在の状況とは多少異なる表現もありますが、ITコンサルに関する深い理解に繋がるかと思います。ぜひご一読ください。
=「ITコンサルタント」の詳細とその活用メリットについて
「コンサル7つの領域」シリーズでは、
・戦略
・業務(ビジネス)
・IT
・人事/組織
・FAS/事業再生
・シンクタンク
の7つの領域について解説していきます。
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執筆者
- アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。
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- アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。