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50代からのコンサルのキャリアを考察|意外と多様な選択肢とは
コンサルティングのキャリアの先にあるものとは?
コンサルティングファームでパートナーの役職まで昇り詰めることができる人は一握りです。出世レースでトップを目指す場合を除いて、コンサルタントを一生の仕事にしようと考える人は少ないかもしれません。では、50歳以降のコンサルタントにはどのようなキャリアが考えられるのでしょうか。具体的なキャリアパスをまとめました。
当記事では、5つのキャリアパスについてご紹介します。
目次
① バックオフィスへの異動
定年が視野に入る年齢になってまでコンサルタントで居続けるのは、肉体的にも精神的にも多大なるコミットメントが必要です。自身の体力・気力によっては、コンサルタント以外のキャリアパスを志向する方もいます。
そこで一番見かけるのが、「コンサルティングファームのバックオフィス部門に異動し、重役を担う」パターンです。
限られたポジションしかないため、タイミングと運の要素も大きいですが、今まで在籍してきた会社で慣れ親しんだ業務プロセス・オペレーションの高度化を担うという、「この会社で在籍してきた経験×コンサルタント経験」が最も発揮されるポジションです。
例えば、コンサルティングビジネスに長年携わってきた経験を活かして、自社ファームのグロースのために取り組む経営企画室での仕事や、各専門領域での知見を活かした部門マネージャー(人事総務・経理・広報マーケティングなど)としてのポジションに就いている方もいます。
特に経営企画室に関しては、現場の肌感を理解した上での経営計画作りや、パートナー陣との折衝が求められるポジションですので、コンサルタント経験者の需要が各社でとても高いのが特徴です。
バックオフィスに異動することの最大のメリットは、ワークライフバランスが比較的担保されやすい点にあると思います。
バックオフィスはコストセンターであるが故に、基本的に残業が推奨されていない環境であることが多く、その分仕事後の時間を長く確保することができます。自身の体調を整えたり、趣味に時間を使ったりするなど、よりゆとりのある生活を志向する方にぴったりのキャリアパスといえます。
一方で、デメリットとして挙げられるのは、給与面での見劣りです。
どうしてもコンサルタント時代より残業が減り、かつフロント業務ではない分、給与が下がってしまうことは多いです。ただ、待遇面はポジションによって変動するので、50歳以上である程度キャリアを順調に築いてきた方であれば、待遇は据え置きで、部門ヘッドなどに就任するケースもあります。
先述しましたが、バックオフィス部門への異動は、マッチするポジションがあるタイミングでできれば、最もスムーズなキャリアシフトができる理想的なルートと言えます。このキャリアパスを志向するのであれば、絶好のタイミングを逃さないよう社内に幅広い人脈を築いておくべきでしょう。
② 事業会社への転職
その他のキャリアパスとしてあるのが、「事業会社で、経営中枢を担う人材として採用される」パターンです。私が見てきた中でも、長く担当したクライアントに気に入られ、経営幹部として転職されたシニアマネージャー以上の役職の方は多くいらっしゃいました。
一般的に、ポストコンサルの採用需要は、”ビジネススキルは身に付けているものの、コンサルに染まり切っていない20代~30代の若手層(マネージャーまでの層)”が最も多いとされています。
相対的に働ける期間が短い50歳以上のハイシニア層が採用されるためには、若い人を上回る魅力を提示する必要があります。
一番分かりやすいのが、コンサルティングを主導してきた経験から得られた幅広い業界・分野の知識、そして顧客理解(転職先にコンサルタントとして関わっていた場合)です。若手ではなかなか難しい視座の高さと、第一線で働き続けてきたからこその経験をうまくアピールしていけば、ポストコンサルの道も開かれるのではないでしょうか。
また、日々のクライアントワークを通じた人脈の拡大も必要です。
例えば、お世話になっているクライアントや同僚、元上司など、これまでに関わってきた人から別の経営者の方を紹介していただくこともあります。信頼関係を築いていれば、そのような人の繋がりをうまく活用して転職することも可能です。
それ以外の方法ですが、特にハイシニア層の方は、エージェントを使った転職をお勧めします。
基本的に役職が上がるほど非公開求人が多くなるため、自力での転職が難しくなります。ハイクラス層をターゲットにしたエージェントを活用することで、情報を集めやすくなり、適切な転職先を考える上でプラスになるでしょう。
詳細に関しては、こちらの記事を参照いただくと良いと思います。
ここまでで、事業会社への転職というキャリアパスについてお話ししましたが、最大のメリットは、仕事の手触り感にあると思います。
コンサルタントとして働く場合、どうしても外部アドバイザーという立場に留まってしまい、社内で実際にチェンジメーカーとして動く機会は少ないのが実情です。一方、事業会社では自身が主導して変革を起こしていく立場になれるというのが大きな魅力です。
対して、デメリットといえば、コンサルタント時代の給与水準よりは下がってしまう可能性もあるという点です。
もちろん、給与交渉が成功した場合や、転職先での業務内容が高度な場合は、例外ケースもあります。ただ、傾向として、コンサルティングファームの方が高水準な給与体制となっている事が多いため、その点を加味しながら検討すると良いかもしれませんね。
③ 顧問としての活躍
特に経験を積み、専門性を獲得したハイシニア層にとっては、「企業顧問の道」も考えられるキャリアパスの一つです。
顧問は、企業の経営者に対し、自らの経験や専門性に基づきアドバイスをする役職で、大きく分けて下記2つのタイプがありますが、コンサルタントは2の外部顧問として専任されることが多いようです。
- 内部顧問・・・自身の所属企業で重役だった人が、そのまま自社に顧問として残る
- 外部顧問・・・外部企業・団体から、知見のある人を招聘する
顧問契約は人によってさまざまですが、大体は非常勤契約で、「月1~4回ほどの参画」など期間が決まっていることが多いようです。著名な方は報酬も高くなる傾向にあり、中には、非常勤契約にもかかわらず大企業と年収2000万円以上の契約を結ぶ顧問もいるとか。
最近では、”企業現場における課題解決を担うエキスパート”として実務型顧問を採用する企業も増えているとのことです。現場で培った経験や実績をもとにアドバイスを行うため、必ずしもパートナーランクであった必要はありません。また、自身で顧問先を見つけるだけではなく、顧問と企業を仲介するエージェントも出てきているため、顧問を務めるハードルも下がってきました。
顧問キャリアパスのメリットとしては、手軽に専門性を活かした仕事をパートタイムで行える点にあります。
ただ、デメリットとして、場合によっては顧問契約だけでは給与水準が下がったり、安定した雇用に繋がらなかったりするケースもあります。
④ フリーランスのコンサルタントとして独立
コンサルティングファームや事業会社への転職だけではなく、「フリーランスのコンサルタントとして独立する」ことも選択肢の一つです。
近年のコンサルティング需要の増加により、コンサルティング会社に依頼せず、より安価なフリーランスのコンサルタントを雇用する企業も増えてきました。専門の案件紹介サイトや情報紹介サイトも次々と出てきており、企業勤めだけではなく、独立して個人で活動するというキャリアパスも見えてきました。ハイシニア層向けの案件も増えていますので、フリーを目指す人は40代のうちに決断しておくとベターでしょう。
フリーランスになるメリットの1つに、高額な報酬体系が挙げられます。
もちろん人にもよりますが、個人で案件を手掛けている場合、ほとんどの収益は自身のポケットにそのまま入るため、会社員時代よりも多い額を稼ぐことが可能になります。ただし、甘い話だけではなく、独立すると、今までは会社負担だった税金などは個人負担になるため、こことのバランスもみていく必要があります。
その他の主なメリットに、フリーランスが故の「柔軟な働き方」がメリットとして挙げられます。
自身の生活スケジュールに合わせた案件選びが可能なので、ある意味無理のないワークライフバランスで、長期的にコンサルティングに携わり続けることができます。しかし、柔軟な働き方がどれほど可能になるのかは、人それぞれ(やり方次第)だと思います。
何故かというと、人によっては、会社員時代よりもフリーランス独立後の方が、ワーク中心になっている方もいるからです。「始業・終業時間が決められている勤め人と違って、フリーランスの方が柔軟に働けるのだから、ワークライフも管理しやすいのでは?」と思う方も多いと思います。ここで重要になってくるのが、”フリーランスの方が対応範囲は広い”という点です。
50歳以上のハイシニア層の方々は、恐らく既にマネージャー以上の職階に就いている方が多いと思います。その方々のメインの仕事は、案件を取ってくるための提案活動(いわゆる営業活動ですね)とその準備が大部分を占めているのではないでしょうか。
また、受注できた案件の実務対応については、下の職階のコンサルタントに任せ、自身は全体的な案件管理や大きな方向性の指示だしに徹することがほとんどかと思います。
しかし、フリーランスとして独立する場合、これらの提案(営業)活動だけではなく、全ての実務対応、経理処理、雑務など諸々自身で行わなければいけません。そういう意味では、企業勤め時代よりも対応すべき範囲が広がるため、ワーク中心になる人も出てくるかと思います。
また、企業勤めでは有給休暇というシステムがありますが、一人でフリーランスのコンサルタントをしている場合、自分の仕事をカバーしてくれる人はいません。そのようなリスクを織り込んで、他のフリーランスとアライアンスを組むなど、ある程度の工夫は必要になってくるかと思います。
とはいえ、勤め時代よりも稼働スケジュールが柔軟になるのは間違いないので、うまく対策を講じれば、自身のライフステージに沿った働き方が可能になり、長期的な意味で、自身の志向に合わせて案件対応できるのも事実です。
その他に、フリーランスに関する記事をこちらでご紹介しておりますので、ご興味に応じてぜひご一読ください。
⑤ 思い切ってFIRE
最近のトレンドとしては、「FIREする」選択肢もありますよね。
FIREとは、”Financial Independence, Retire Early” の略で、経済的自立を得た上で早期退職を行うことです。
FIREと言ってもカテゴリは下記4種類あり、自分の生活スタイルに合わせたFIREを考えることが大切です。どのカテゴリを選ぶかによっても、必要な費用は変動してきます。
FIREの種類 | 概要 |
Fat FIRE | 資産だけで贅沢した生活が送れる |
Lean FIRE | 節約しながら最低限の生活が送れる |
Barista FIRE | 頻度を減らして働きながら生活する |
Coast FIRE | 生活費を賄えるだけの資産はあるが、ゆるく働く |
資産を運用した利益の範囲内で生活していくことが基本となるFIREですが、アメリカでは4%ルールがあります。つまり、年間支出の25倍の資産があれば年利4%の運用で生活できるというもので、これがFIRE実現の成否を分ける水準と言われています。
その水準を達成してFIREを実現するためには、徹底的な支出の切り詰めからの貯蓄・投資が求められます。ご自身の生活水準や貯蓄・投資額、資産形成のやり方を見直し、20代・30代のうちから計画的に準備をしていくことが必要です。
本稿ではハイシニア層(50歳以上)のコンサルタントのキャリアについて解説していきました。
若手にとってはまだまだ先の話とも思いつつも、いつかはやってくる話。その時に慌てるといった事態に陥ったりしないために、今のうちから将来について考えておいて損はありません。
マネージャーからシニアマネージャーのミドル層の方々にとっては、今後のキャリアは検討事項でもあるはずです。日々の業務で忙殺された結果、あまりキャリアを考える時間がないコンサルタント生活ではありますが、一旦立ち止まって、「将来何がしたいんだっけ?」と思いを巡らせる時間を持ちたいものです。
ちなみに、本メディアを運営するコダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社は、「事業会社への転職」や「フリーランスとして独立」のいずれもご支援できます。
今後のキャリアについてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの人生観や仕事観に寄り添ったご提案をいたします。
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執筆者
- 新卒で外資系コンサルティングファームに入社。以来、現在まで一貫してHR領域のコンサルタント、リサーチャーとして活動。2022年に独立。趣味は筋トレとカリンバ。
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