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日本のコンサルティング市場規模将来予測(2023‐2030)|コンサル市場規模2023年版~後半~
日本国内におけるコンサルティング業界の市場成長予測(2023年-2030年) ~市場規模を左右する経済環境を織込んで算出~
日本国内におけるコンサルティング市場規模(2023年版)の前半では、2017-2022年度の市場規模推定についてご紹介しました。2022年度は1.8兆円規模の市場であり、前年度比+16.0% (2017年からのCAGR:+13.6%)でした。後半となる今回はコンサルティング市場が今後どの程度成長するのかについて、「試算前提」「3ケースの予測」「考察」の3部構成でお届けします!
コンサル事業の将来戦略を検討中の方、コンサル事業への進出を考えている方、コンサル業界への就職・転職を考えている方など様々な方にとって有益な内容となっております。ぜひご覧ください!
目次
将来のコンサルティング市場規模の試算前提
コンサルティング市場規模の算出にあたっての前提を下記に記載します。
1.1 データ取得対象企業
- 内資・外資の主要なコンサルティング企業が対象
- 主要なコンサルティング企業はカオスマップ2023の掲載企業
- Big4のFAS系コンサルは総合系コンサル売上高に含む
1.2 コンサルティング以外の売上高
- 総合系とITコンサル系の開発領域は極力除外
1.3 将来コンサルティング売上高の予測
- スタンダードケースでは、INDEX低下が発生したのち、一定期間の停滞を経て回復すると想定
- ポジティブケースでは、INDEX低下は起きるものの、低下からの回復が早いと想定
- ネガティブケースでは、INDEX低下が発生したのち、外部環境の影響を大きく受けることを加味
- 各ケースのINDEX値は、日本だけでなくグローバル含めた外部環境の動向を踏まえて当メディア独自のロジックで設定
3つのケースでの将来市場規模~スタンダード、ポジティブ、ネガティブ~
スタンダードケース、ポジティブケース、ネガティブケースの3つに分けて、コンサルティング業界の市場規模の将来までの推移を試算しています。
2.1 3つのケースについて説明
- スタンダードケースとは?変数の将来推移や仮定で置いた数値を通常程度に想定したケースのことです。普通ケースとも言います。
- ポジティブケースとは?変数の将来推移や仮定で置いた数値をやさしめに想定したケースのことです。楽観ケース、アグレッシブケースとも言います。
- ネガティブケースとは?変数の将来推移や仮定で置いた数値を厳しめに想定したケースのことです。悲観ケース、コンサバケースとも言います。
2.2 スタンダードケース
- 2030年の市場規模は、2.1兆程度と試算
- 2022年から2030年の成長率は13%
図表1 日本国内コンサルティング市場(スタンダード予測)[十億円]
2.3 ポジティブケース
- 2030年の市場規模は、2.2兆程度と試算
- 2022年から2030年の成長率は19%
図表2 日本国内コンサルティング市場(ポジティブ予測)[十億円]
2.4 ネガティブケース
- 2030年の市場規模は、1.9兆程度と試算
- 2022年から2030年の成長率は3%
図表3 日本国内コンサルティング市場(ネガティブ予測)[十億円]
コンサルティング業界の将来市場規模を踏まえた考察
ここでは、第二章を踏まえて得られる示唆について確認していきます。
3.1 2023年度も引続きコンサルティング市場規模は拡大だが・・・
上場ファームの決算状況(2023年版)で発表の通り、コンサルティング業界は23年も概ね活況のようです。これはコンサル市場規模2023年版(前半)でも触れているように、主にDXやデジタル関連施策に対する大企業においてのコンサルティング需要が継続しているためと言えます。(各社決算関連資料では必ずDXについて言及あり)
しかしながら、前半記事でも紹介していますが、領域によっては市場成長率(前年比)の伸びが低下し始めています。このことに外部環境を織込むと日本のコンサルティング市場規模の成長がマイナスに転じる時期は近いのではないかと予測します。
3.2 将来、マイナス成長に転じる主な想定要因 ~日本GDPの停滞~
IMF公表の名目GDPデータ(図表4)*を確認すると日本GDPは2013年に5兆USドル付近に減少したあと停滞が続いています。このトレンドは2028年も同様で、アメリカや中国がGDPを順調に伸ばすのとは対照的です。
コンサルティングファームは、基本的に拠点を置く国の企業に対してサービスを提供するため、拠点とする国のGDPの停滞はコンサルティング市場規模の減少に少なからず影響を与えると考えられます。
図表4 主要国・エリア別の名目GDP推移・予測(2024年~)
*IMF公表の名目GDPデータを当メディアでグラフ化。経済成長を見る際に利用されるのは実質GDPが多いですが、日本のコンサルティング市場規模の推定・予測値の算定値がインフレ変動を調整したものではないため、GDPを見る際にも名目GDPを採用。
3.3 将来、マイナス成長に転じる主な想定要因 ~世界経済の変化~
前回市場規模予測を行った2022年12月以降、世界経済において転機が起き始めています。
- 欧米でのコンサルファームや大手テック企業での従業員削減や初任給引き上げ凍結
- 世界各国のインフレ抑制政策の動向(政策金利の利上げ終了間近の観測拡大)
- 中国リスク(不動産業を代表に業績悪化のニュースが多発)
世界の景気減速によりクライアントの業績が芳しくなくなり、投資意欲が低下することで、コンサルティング支援ニーズが低下することが懸念されます。
幸い直近の日本企業の業績は良いニュースが多く、コンサルティングサービスの特性上、外部環境の影響をすぐに受けるものではないですが、将来、世界経済の減速の影響を受けるのは避けて通ることはできないはずです。
3.4 将来、マイナス成長に転じる主な想定要因 ~急成長した組織の歪み~
売り手市場で新卒採用、転職採用市場を賑わしているコンサルティング業界ではありますが、経済紙での情報や採用有識者からの情報を踏まえるとコンサルティング要員の採用数拡大トレンドは転換点を迎えている可能性があります。
新卒採用市場では、大学生の情報量は限られていることもあり、前述した人員削減報道に大きく影響を受けてコンサルティングファームを敬遠するケースが多くなっているとのことです。(志望業界から外す、内定辞退する)
また、転職市場においては、転職者がファームに参画したもののアサイン待ちとなったり、アサインされても業務難易度が低く転職前よりも業務量も少なかったりして、暇を持て余すコンサルタントも発生してきていると聞いています。
前半記事で2022年度の売上高成長率の鈍化をお伝えしましたが、アサイン率低下や生産性低下が一要因の可能性があり、来年度のリサーチで検証したいと考えます。
3.5 全体俯瞰からも見込まれる高いコンサルティングニーズ
業界に身を置く筆者としても心痛い内容ではありますが、コンサル業界に悪影響を及ぼす外部環境の変化について述べました。しかし一方で、引き続きコンサルティングニーズとなる経営課題や業務課題が多くあることも事実です。
例えば、
- “2025年の崖”からのデジタル化、DX化支援ニーズの継続
- 将来の人材不足問題である2030年問題(図表5)への対策は急務(業務効率化の推進支援)
- 人的資本経営や健康経営、ESG投資などの支援ニーズの拡大
”2025年の崖”への対応は待ったなしの状態ですし、2030年問題への対応も急務になってきていることから、ポジティブにとらえると、コンサルティングニーズは依然としてあります。
図表5 高齢化の推移(~2020年)と将来推計(2025年~)
内閣府 高齢社会白書 2023年版データを基に当メディアで作成
本稿では、日本国内の将来のコンサルティング市場規模(2023~2030年度)について解説してきました。
- 2022年度の日本国内におけるコンサルティング業界の市場規模は、1.8兆円である。
- 日本国内におけるコンサルティング業界の2030年度の市場規模は、スタンダードケースで2.1兆円(2022年度の1.13倍)、ポジティブケースで2.2兆円(同1.20倍)、ネガティブケースで1.9兆円(同1.03倍)となっている。
- コンサルティング市場規模の成長余地は狭まってきている。
といったことがわかりました。
本稿に興味をもっていただけた方は、ぜひ他の記事についてもご覧いただけると嬉しいです。
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執筆者
- SIer・ITコンサルファームでのキャリアを積む。大規模システム刷新プロジェクトにおける業務要求定義からシステム導入運用まで幅広いフェーズや大企業でのDXにおけるPgMOのリーディングや実務をこなす。業務・IT双方へ精通し、関係者との迅速な関係構築のうえ、両面からの業務改革支援に強みを持つ。
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