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AI時代に求められるコンサルの価値とは?|変革の成功にこだわるコンサル会社社長に聞いてみた

AI時代に求められるコンサルの価値とは?|変革の成功にこだわるコンサル会社社長に聞いてみた

生成AIが高度な資料や分析を瞬時に生み出す時代、コンサルの価値はどこへ向かうのか。「顧客と共に考え、共に働き、共に変える」変革共創型コンサルティングを掲げるケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの榊巻社長と、コダワリ・ビジネス・コンサルティング代表の大谷内が、コンサルの本質、フレームワークへの向き合い方、中小ファームの生存戦略、そして一人ひとりのコンサルタントが今考えるべきことまで、本音で語り合った。

クライアントが求めるのは「変革共創」 | 優秀な補佐役が無限にいても、変革は起きない

大谷内:まずは本質的な問いから始めたいと思います。アメリカの最新事例を日本に持ち込むといった情報格差で商売する、いわば顧客にナレッジを渡すだけのコンサルは、もはや価値が消滅しつつあります。AI時代のコンサルの価値を、榊巻さんはどうお考えですか。

榊巻:いまや企業経営や組織運営は最新ナレッジを取り入れるだけでうまくいく時代ではなくなりました。AIの回答も踏まえつつ、組織としてそれらをどう咀嚼し、どう変わるか、そのために何をやり、何をやらないかを素早く決めることが極めて重要です。そうした組織の意思決定を助けることが、コンサルの価値になっていくと考えます。

大谷内:時代の流れに応じてこれからのコンサルの価値を考え抜いていくと、残る価値の中心は、クライアントを本質的に変化させていくことだと思うんです。まさに貴社の提言の「変革共創型」だと思います。

榊巻:そうなんです。「コンサルの仕事はなくなるのでは」とよく聞かれますが、変革のプロとしての仕事はなくならないと思っています。AIの台頭とは、私の感覚で言えば『作れる』『語れる』『アイデアを出せる』存在が現れたということ。めちゃくちゃ優秀な派遣スタッフや社外取締役が隣にいるようなものです。ですので、こうした作業者や助言者のような役割を担ってきたコンサルのニーズはなくなる可能性があります。

でも、派遣スタッフや社外取締役はあくまで補佐役です。当事者ではない存在が無限にいたところで、変革は起きません。ここにAI時代のコンサルの価値があります。補佐役であるAIの力を借りながら組織をどう動かすかに、変革のプロとして踏み込み、お客様と変革を共創する部分は一層求められると考えます。

大谷内:AIが出てきたことで創造性の発揮やタスクの高速化が進んでいますから、AIを使いこなせる人材を活かして、お客様の成長にどう寄与するかが問われますね。インターネットが登場した当時も、コンサル業界は今回と同じように不安が蔓延していたそうです。ただ結局、新しい技術による影響を悲観的に考えすぎるのではなく、それらを活用してみながら、いかに自身の価値を最適化していくかがコンサルの腕の見せ所であり、変革力にもつながっていくのだと思います。

コンサルティング提供価値マトリクス。横軸にコンテンツ重視とプロセス重視、縦軸に顧客の依頼に従うと顧客に物申すを取り、先生・専門家型、SIer型、労働力型、変革共創型の4類型に整理した図(出典:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)
コンサルティング提供価値マトリクス(出典:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)

榊巻:いい話ですね。コンサル業界は、ナレッジを持つ人が強かった先生型の時代から、SIer型、労働力型へと主役が移ってきました。我々はコンサルの提供価値を、横軸に「コンテンツ重視かプロセス重視か」、縦軸に「顧客の依頼に従うか、変革のために顧客に直言することも辞さないか」を取った4象限で整理しています。ナレッジを提供する先生・専門家型、システム導入を提供するSIer型、知的労働の代行を提供する労働力型、そして変革の道筋と実行の推進力を提供する変革共創型です。AIの台頭によって、右上の変革共創以外の領域はどんどん小さくなっていると感じます。そうするとコンサル各社はなんらか次のフェーズへシフトしていくはずです。そのときに、ケンブリッジが変革共創の第一人者として認知される状況を作りたい。今がちょうどそのタイミングだと思っています。

大谷内:大手の動きを見ていても、それは感じます。AIの要素と実行支援・BPOを組み合わせる方向に舵を切ったファームもあれば、買収を重ねてサービスメニューやオファリングを一気に増やしているファームもある。各社が次のポジションを取りにいく、まさにそういう時期ですよね。陣取り合戦とまでは言いませんが、各ファームの戦略性を考えるのも面白いところです。

AI時代に求められるコンサルスキル|人間力の核は「泥臭い関係構築」と「傾聴」

大谷内:これからのAI時代、コンサルタントに必要なスキルについても論じたいです。弊社は特に人間力を重視しておりますが、ケンブリッジさんはどのようにお考えでしょうか。

榊巻:うちも人間力を重視しています。そのうちのひとつに、お客様との泥臭い関係構築力があります。提案書からして泥臭く、「我々はこれを提供します」だけでなく「こういうふうに一緒にやって変革を成功させましょう」と明記します。例えば、我々は経営者への報告書もお客様と一緒に作ります。どういう報告なら経営者が納得するかひざ詰めで議論し、最後はお客様自身に報告してもらい、うまくいったらハイタッチする。先日、他社のコンサルの方にこの話をしたところ「報告書は作るのも発表するのもコンサル側。一緒に作るなどありえない」と驚かれました。でも、変革を成功させるには、お客様が自分ごとになってくれることが最重要です。そうなるためには、我々自身がお客様以上に当事者意識を持ち変革に立ち向かう必要があります。だからお客様も自分ごとになる。こういうことを指して「泥臭い」と言っています。お客様からはよく「戦友のようだ」と言われます。

大谷内:なるほど、泥臭いですね。他にお客様との関係構築で重視している点はありますか。

榊巻:これも人間力の一つの要素だと考えていますが、お客様の話をきちんと聞くことです。関係構築は、相手の話を、勝手な解釈を加えずフラットに理解することから始まるのに、意外とできていない人が多い。我々は聞いた話を言語化し構造化し「この理解であってますか?」と確認しながらプロジェクトを進めます。きちんと聞いて理解していることがお客様に伝わるから、変革の方向性からブレたお客様に直言することもできる。そしてこれがさらに深い関係構築につながる。

榊巻亮氏(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)と大谷内隆輔(コダワリ・ビジネス・コンサルティング)の対談写真

大谷内:人間力というと資質の話になりがちですが、まずは相手の話をきちんと聞いて理解する「傾聴」が入口にある、ということですね。ご存じのとおり、人間力の定義については様々な見解があります。弊社の場合は、プラス思考や努力や愛情などで構成しています。そして、お客様が置かれている環境や、お客様が何を考えているかを把握して動く。そこをつかまないと信頼関係は築けませんし、お客様を惹きつけることもできない。ちょうど書籍の改訂版で、人間力だけで見開き2ページを新規に執筆したテーマです。

榊巻:各社で定義が違うのは面白いですよね。候補者の方々には、ぜひそこを見極めてほしい。

AIとの付き合い方| AIは自分の地力以上のものをアウトプットできない

大谷内:クライアント自身もAIを使いこなす中で、変革共創型コンサルの進め方はどう変わりましたか。

榊巻:人にしかできないこと、AIでブーストできることをうまく使い分けています。

人にしかできないのは判断すること、共感を引き出すこと、関係を構築することだと考えます。

アイデアや情報の中から自社にとってのベストを選び、やらないことを決める。それが判断です。そして我々はあえて「感情が動く」という表現を使うのですが、組織は共感が生まれないと動きません。そのためには人との関係構築が前提になる。AIがどれだけアウトプットしても、良し悪しを判断するのも、組織を動かすのも人間の仕事です。

一方、現場のデリバリーの品質と速度をAIでぐっと上げる取り組みを進めています。調査結果のとりまとめをサポートしてもらったり、議論やアイデアの幅を広げてもらったり、活用シーンはたくさんあります。AIを活用するうえで大事にしていることがふたつあります。ひとつめは、AIは手段でしかなく、人が「何のためにやるのか」をちゃんと核として持っておくこと。もうひとつは、人がAIのアウトプットを活用できるだけの地力を養うこと。地力とは、思考力、言語化力などを指します。これらを持たず、AIのアウトプットをそのまま顧客に伝えたり資料に載せたりしても、それは「どこかの誰かが言ってました」というのと同じで、誰も適切な判断ができない。いくらAIが進化しても、自分の地力以上のものはアウトプットできないと考えます。

コダワリさんはどうですか。AI、だいぶ使えていますか。

大谷内:正直、人それぞれです。ただ、うちは昔から言語化力にこだわってきた会社なので、そこが活きていると感じます。AIにきちんとインプットできるかで結果は全然違います。それに、AIからは情報や選択肢が大量に出てきてしまうので、そこで取捨選択ができるかどうか。つまり、使い方のテクニックはどうでもよくて、使う側に回れるか使われる側になるかだと思っています。AIを有効活用できる人材は複利式に継続成長できると考えています。

榊巻:それはありますよね。AIは手段であって、振り回され始めたら終わりです。私はゼロからAIに問いかけることはまずなくて、言いたいことがある程度整理できて、自分の中に20〜50%の叩き台ができた段階で「これをどう思う?」と壁打ちに使います。

大谷内:同じです。叩きを作る力、つまり言語化する力があって初めて、AIはブースターとして機能する。ここでも結局、地力の話に戻ってくるわけですね。

フレームワークは「静止画」、変革方法論は「動画」|ノウハウをオープンにし続けることが強み

大谷内:世に溢れる使えるフレームワークと使えないフレームワークの違いについて伺いたいです。貴社の書籍を拝読すると、プロジェクト推進のフレームワークやテンプレートがかなりパッケージングされている印象を受けました。

榊巻:かなり頑張って方法論を整備しています。ただ、それらは世の中一般のフレームワークと別物だと思っています。

世の中一般のフレームワークはその場での正解を導くには有効です。ただ、枠に沿って意見を整理するのに留まってしまうと、それらしい分析はできても意思決定は前に進まない。そこが使えないフレームワークの正体だと思います。

我々が整備しているのは、変革をどう進めるかにフォーカスした検討のプロセスです。どの順番でどんな検討をしたら変革がうまく起こりそうか。いわゆるフレームワークが1枚ペーパーの静止画だとすると、我々の変革方法論はどちらかというと動画、すなわち流れです。

ケンブリッジの変革方法論の全体像。Concept Framing、Assessment、Business Modelから、Scope、PEW、BPP/Design、Deployment、Rolloutまでの工程と各工程の成果物を示した図
ケンブリッジの変革方法論の全体像(出典:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)

大谷内:なるほど、プロジェクトや議論の流れそのものを設計している、ということですね。

榊巻:そうです。ゴールを設定し、現状を調査し、構想を作り、要求定義し、チェンジマネジメントする。各フェーズで到達すべき状態とアウトプットの標準があり、それに乗っかるとプロジェクトの成功率が高まる。ただし案件ごとにかなりアレンジが必要で、そこが社員の腕の見せどころです。

大谷内:基本が同じだから、業界や領域を問わず通用するわけですね。一方で、ここまで方法論を整備していると、持ち出されるリスクはないのですか。

榊巻:もちろんあるでしょうね。実際、うちでバリバリと活躍したメンバーが他社に行き、ケンブリッジ流のやりかたで変革を成功させている、という話はよく聞きます。でも、それで世の中の変革がひとつでも多く成功すればよいと思っています。それに、世の中が追いついてきたら我々がまた一段バージョンアップすればいい。ノウハウをオープンにし続け、更新し続けることが強みだと思っています。

AIをチームの一員にしつつ、変革の熱量を伝播させる|ファシリテーション型コンサルティングの現在地

大谷内:以前から貴社が掲げているファシリテーション型コンサルティングと「変革共創」の関係を教えてください。

榊巻:ファシリテーションが一般用語になってきたので、近年は「変革共創」と自称しているものの、中身は同じです。さきほどのフレームワークの話にも通じるのですが、正解のありようが目まぐるしく変わる現代において、その時々で正解を求めるよりも、ファシリテーションの力で関係者の納得感をトータルで醸成しながら物事を進めるほうが変革には有効だと考えています。

面白いのは、AIが意見やアイデアを出す時代だからこそ、この型が活きることです。例えば議論の最中、ファシリテーターが「Aさんはどう思いますか? なるほど。ちなみにAIに聞くとこういう意見ですが、どうでしょう」と差し込み、そこからお客様の意見をさらに深掘り、議論の品質を上げる。「AIがこう言っているので、これでいきましょう」で終わらせず、AIをお客様の一員であるかのように扱い議論の呼び水にするのはファシリテーション型ならではの活用法かなと思います。

もうひとつ、ファシリテーション型コンサルティングの重要な役割は、変革の熱量を伝播させることです。プロジェクトが長くなり関係者が増えると、お客様の熱量はすぐ下がります。変革が停滞しないよう熱を伝播させなければいけない。これが本当に難しい。そこで、増え続ける関係者の中に入り込み、あちこちをつないで熱を伝播する役割が必要で、我々がその役割を「変革スペシャリスト」として担っています。

大谷内:貴社コンサルタントではなくスペシャリスト、という言葉選びに意図を感じます。

榊巻:専門性には、知識・業界の専門性と、スキルの専門性の2種類があると思っています。我々が磨くのは後者です。業界のスペシャリストになっても、その業界自体がなくなるかもしれない。AIの専門家なんて数年前はいませんでしたよね。だからこそ、変革の火種をうまく作り、それを伝播させるスキルを持ったスペシャリスト集団になろう、と打ち出しています。

大谷内:わかりやすいですね。いわゆる問題解決とも少し違う、ということですよね。

榊巻:問題解決はその一部です。コンセプトを立てて、関係者の納得感を醸成し、プロジェクトをドライブする。そして問題が出てきたら次々と解決する。これらを複合的に弛みなく担いながら変革の熱を冷まさず伝播させていくのが「変革スペシャリスト」ということです。

AI時代の中小ファームの生存戦略

大谷内:折角我々二人で話しているので、大手とは違う、中小規模ファームならではの生存戦略についても議論したいです。単刀直入に、現在のケンブリッジの規模感をどうお考えですか。

榊巻:ちょうどいい規模感だと思っています。業界・職種に関係なく多様な案件を経験しながら、「変革のプロ」としての地力を磨ける。特定領域を深めたくなればそれもできる。社員と経営の距離も近くて、他社さんに「大丈夫か?」と驚かれるくらい、社員がフラットに経営陣に話しかけてきます。

コダワリさんはご自身の規模をどう見ていますか。

大谷内:うちも、仕組み化しすぎず、いい塩梅でいろいろ改革やチャレンジも失敗もできる規模だと認識しています。コンサルティング以外の事業にも積極的に投資・チャレンジするという取り組みも、この規模だからこそできている面があります。経営層からの意思も通しやすい一方で、社員から会社への意見も通りやすい。社員一人ひとりの行動が、ダイレクトに組織に影響を与えられる規模感ですね。

榊巻:いいですね。うちもほとんどの施策がトップダウンではなく、誰かがやりたいと言い始めたことがいつの間にか会社の重要施策になったりします。逆にトップダウンが全く効かないのが困りものですが、納得すれば動く文化なので、私含む3人の役員で全社員と1on1を実施しています。

大谷内:200人全員と1on1を回すのはすごい。一方で、規模を大きくして、全体のポートフォリオでヒト、モノ、カネを担保したほうが楽だなと考えるときもあります。それはそれで規模の原則が働き失うものもありますので、会社にとって何がベストかを考えない日はありません。規模の拡大についてはどうお考えですか。

榊巻:3000~4000人にするつもりは全くありませんが、500〜1000人、中堅の中では少し上のサイズにはならなければと考えています。理由は案件の多様性です。一つの領域に注力していると、その領域が丸ごとなくなるかもしれない世界ですから。

大谷内:本当にそうですね。業界が丸ごとシュリンクすることもある。専門特化は諸刃の剣で、ランチェスター戦略としては合理的でも、リスク分散との両立が要る。本質を押さえつつ多様な案件を手掛け、気が向いたら集中もできるという意味で、たしかに500〜1000人はギリギリいいサイズだと思います。ちなみに、お客様から選ばれる理由としては何が大きいと感じていますか。

榊巻:よく言われるのは、担当者による品質のばらつきが少ないこと。そして、変革共創型を掲げて「ノウハウをオープンにしてお客様の変わる力を引き出す」「お客様をコンサルに依存させない」とまで言っているファームがそう多くないことだと思います。

大谷内:その思想はよくわかります。私も「コンサルは支援してとっとといなくなるべき。成果を出していれば、結果として別案件やしかるべきタイミングで相談が来る」と話しています。コンサルに依存していたらいつまで経っても顧客が自分たちでやれなくなってしまうので。

榊巻:コンサルビジネスをうまくやって稼ぎたいのではなく、お客様と一緒に変化を生み出したい。お客様に自立を促したら仕事がなくなるのでは、とよく聞かれますが、自立してくれるならそれでいい。より難しいことをやりたいと再び頼ってくださると、方法論がアップデートされる。この更新サイクルこそが我々の生存戦略です。

ケンブリッジの養成学校|育成の要諦は「一度体験する」

大谷内:人材育成についても伺います。さきほど「方法論を頑張って整備しており、担当者による品質のばらつきが少ない」とおっしゃっていました。属人的なスターに頼らず、組織全体で高いデリバリー品質を維持するのは、どのファームにとっても難題です。しかも貴社はその方法論を研修事業で外販されていますよね。

榊巻:「プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校」ですね。我々の方法論を、プロジェクト未経験の方でも実践できるよう教材化しました。超上流工程の進め方やRFP作成、「変革のプロ」が持つべきベーススキルなど、いくつかの講座があります。コンセプトは「一度体験する」。いずれの講座も約4カ月でプロジェクトやコンサルタントの振る舞いを疑似体験する設計で、一度経験しておくと、つまずくポイントも次にやるべきことも見えるので、その後の伸びが全然違うんです。今では年間400〜500人が受講してくれています。情報システム部門の担当者やプロジェクトリーダーをはじめ、営業職、企画職、PMO、DX推進担当者まで、幅広い職種・役割の方に受講いただいています。

大谷内:そんなに受講されているのですね、すごいですね。プログラムを作ること自体もそうですが、教える側に回る社員の方の能力もますます上がっていきますよね。

榊巻:その通りです。しかも受講生から来る質問のレベルが高く、講師を務めること自体がコンサルワークの疑似体験、ある種の訓練になっています。それと追い風なのが、経産省がデジタルスキル標準で定義したビジネスアーキテクト(※)が、ケンブリッジのコンサル像とどんぴしゃりなことです。デジタルスキル標準を参考に人材育成の仕組みを作りたい、と考える企業の方が学びに来てくださる流れができています。
※ビジネスもITもわかり、間をつないで変革を進める人材

大谷内:いくつかの講座がある、というお話しでしたが、講座の選び方で気を付ける点はありますか?

榊巻:我々は、「変革のプロ」に必要なスキルを、心構え、ビジネス基礎力、変革方法論、プロジェクトマネジメントの4階層で定義し、下層から身に着けることを推奨しています。プロマネ研修を重視する会社が多い印象がありますが、プロマネは車で言えば速度計や燃料計など現状をつど把握するメーターのようなものです。エンジンに当たるのは心構えとビジネス基礎力で、方法論は道路。エンジンから鍛えなければ、そもそも動けません。

変革の4層スキル。心構え、ビジネス基礎力のソフトスキルと、変革方法論、PJマネジメントのハードスキルを4層で示した図
変革の4層スキル(出典:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)

大谷内:その比喩はしっくりきます。プロジェクトリーダーには、ある意味で人間力が強く求められますから。下層の心構えとビジネス基礎力は、まさに人間力の基盤ですよね。

コンサルを入れたのに変わらないジレンマと、コンサルしているのに変えられないジレンマ

大谷内:一方で、コンサルが入っても変われない組織もあります。現場の反発や見えない壁に阻まれてプロジェクトが頓挫し、綺麗なアウトプットだけが残る。この難しさをどう見ていますか。

榊巻:根本の原因は、お客様がコンサルに依存しすぎて「変わる力を失っている」ことです。コンサルはブースターでしかない。自分たちに変わる力が一定ないと、変われないんです。

大谷内:コンサルに頼めば変われると思ってしまっているクライアントがいるのも事実です。コンサルはきっかけでしかないのに、です。こう変わろうという覚悟を経営が持たない。現場も変化を避ける。現状維持バイアスがどうしても強い。「変わる力を失っている」とは、まさにこういう状態ですね。

榊巻:型別に見ると、派遣労働型では変わろうとするモメンタムが生まれない。先生型もいい本を読んで終わったとなりがちで、行動のエネルギーが湧かない。SI型は唯一ものを作るので、システムができると強制的に業務が変わる面はありますが……。

榊巻亮氏(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)と大谷内隆輔(コダワリ・ビジネス・コンサルティング)の対談写真

大谷内:クライアント自身が、それを本当にやりたかったのかと言われると、微妙ですね。大規模な組織・業務改革案件なのに、気付いたらシステム改変案件になってしまっていた、というのもあるあるネタです。なるほど、先生型・SI型・派遣労働型コンサルが入っても変わらないのはなぜか、という整理は、実務感覚として非常にしっくりきます。

榊巻:そうなんです。だから変革共創で二人三脚し、お客様の中の発電機を回すしかない。ただし、変わる力を0から10にすることはできません。1や2があるなら、それを増幅させることはできる。だから、変わりたいと思っているキーマンを見つけ、その人を軸に変わる力を育て、引き上げていくんです。コダワリさんは、どう対応していますか?

大谷内:キーマンに変わる気がなさそう、社内で影響力を発揮できなそう、時間が取れず「あとはやっておいて」となりそう、そうしたケースはあえてお断りすることもあります。成功させられないと思う案件も「やめたほうがいいと思います」とお伝えする。あとは、亜流ですが、外から変革できないなら、まずは中からという手の一つとして、コンサル経験者にクライアントへ入社してもらい、変革を短期・中期・長期的にアプローチしてもらうこともあります。弊社は人材紹介サービスをやっておりますので、このような手段も取れます。

最後に、コンサルタントとは何か?|この時代に一人ひとりのコンサルタントが考えるべきこと

大谷内:最後に、激変するコンサル業界で、一人ひとりのコンサルタントが今考えるべきことを伺いたいです。

榊巻:「コンサルという名前のビジネスがやりたいのか?変化を起こせる人になりたいのか?」を自問してほしいです。どちらが良い悪いではなく、好き嫌いの問題として、考えるべきだと思います。コンサルと一口に括れる時代はとうに終わり、会社によって、やっていることや狙っていることはまるで違う。自分はどの領域で、何者になっていくつもりなのか。

AIでコンサルの役割がなくなるかといえば、逆です。情報を持ってくればいい時代、言われたことをやる時代は終わり、本当に難しい仕事だけが残る。「材料も労働力もある中で、うちが変わるためにはあと何が足りないのか」を議論できる力が、最大の価値になると思っています。

大谷内:まさに「コンサルとは何か」という本質の話ですね。それと関連して感じるのは、戦略系・総合系・IT系といった昔ながらの区分は、実態としてどんどん曖昧になっているということです。これからは、サービスの提供メニューではなく、何を狙い、どういうポリシーで価値を提供しているのかがファームの違いになっていく。同じ伴走という言葉を使っていても、その中身が正反対ということが実際にありますから。書籍で各社紹介を執筆していても、その点が差別化ポイントになっていくのですが、最も明文化しづらいところで、頭を悩ませています。「コンサル各社のポリシーを示したコンサル業界マップ」を作ってもいいかもしれません。

榊巻:それは面白い。候補者もお客様も、そこがわからないままコンサルと一括りに語ってしまうのは、もったいないですよね。

あと、一人ひとりのコンサルタントが今考えるべきこととして再度触れておきたいのは、AIを使いこなせるだけの言語化力や思考力といった地力を養ってほしい、ということ。AIを指揮するには、結局自分の地力が要ります。

大谷内:私も考えは同じです。コンサルはサービス業であり、問われるのは自分ではなく「お客様に何を提供したいか、何を提供できるか」。だから社員には、「お客様から一番に相談を受ける存在になれ」と言っています。テーマは何でもいい、あの人に相談すればなんとかなると思ってもらえる存在になるために、スキルも知識も磨き続ける。ときには自分の人脈、会社としての人脈も総動員して、解決を導いていく。それがコンサルの提供価値だと考えています。

榊巻:なんとかしてくれると思われる存在。いいですよね。

大谷内:「なんとかなりませんか」と相談していただけるのは、コンサル冥利に尽きますよね。

本日は、現役コンサルにもこれからコンサルを目指す人にも心に残るお話をしていただき、ありがとうございました。


【本対談の要点】

・生成AIは「作れる・語れる・アイデアを出せる」優秀な補佐役だが、当事者ではない補佐役が無限にいても変革は起きない。AIの力を借りながら組織をどう動かすかに変革のプロとして踏み込み、お客様と変革を共創するところにコンサルの価値が残る(榊巻)

・コンサルの提供価値は、横軸「コンテンツ重視かプロセス重視か」、縦軸「顧客の依頼に従うか、変革のために直言も辞さないか」で、「先生・専門家型/SIer型/労働力型/変革共創型」の4象限で整理できる。AIの台頭で変革共創以外の領域は小さくなっており、コンサル各社は次のフェーズへシフトしていく(榊巻)

・人にしかできないのは、判断すること、共感を引き出すこと、関係を構築すること。AIは手段であり、使う側の地力(思考力・言語化力)以上のものはアウトプットできない。叩き台を作る言語化力があって初めて、AIはブースターとして機能する(榊巻・大谷内)

・人間力の核は、お客様以上の当事者意識で変革に立ち向かう「泥臭い関係構築力」と、相手の話を勝手な解釈を加えずに聞き、言語化・構造化して確認する「傾聴」。きちんと聞いて理解しているからこそ、変革の方向性からブレたお客様にも直言できる(榊巻・大谷内)

・コンサルが入っても変われない根本原因は、コンサルに依存しすぎて顧客が「変わる力」を失っていること。コンサルは0を10にはできず、1や2を増幅するブースター。だから変わりたいと思うキーマンを軸に、顧客の変わる力を育てる(榊巻)

・変革共創(ファシリテーション)型は、AIをお客様の一員のように扱って議論の呼び水にし、関係者の納得感をトータルで醸成しながら変革の熱量を伝播させる。お客様をコンサルに依存させず、自立してくれるならそれでいい。より難しい相談で再び頼られ、方法論が更新されるサイクルが、中小ファームの生存戦略になる(榊巻)

・一人ひとりのコンサルタントは「コンサルという名前のビジネスがやりたいのか?変化を起こせる人になりたいのか?」を、良し悪しではなく好き嫌いの問題として考えるべき(榊巻)

【本記事のキーワード整理】

■ 変革共創型コンサルティング(Co-transformer)
「顧客と共に考え、共に働き、共に変える」型のコンサルティング。正解を提示するのではなく、変革の道筋と実行の推進力を提供し、顧客が自ら変わる力を引き出すことを重視する。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズが従来「ファシリテーション型コンサルティング」と呼んできたスタイルを、近年こう自称している。

■ コンサルティング提供価値マトリクス(コンサルの役割4象限)
ケンブリッジが定義した、コンサルの提供価値の分類。横軸に「コンテンツ重視⇔プロセス重視」、縦軸に「顧客の依頼に従う⇔顧客に物申す(変革の成功のために)」を取り、①提案・ナレッジを提供する「先生・専門家型(Teacher)」、②システム導入を提供する「SIer型(Engineer)」、③知的労働の代行を提供する「労働力型(Worker)」、④変革の道筋・実行の推進力を提供する「変革共創型(Co-transformer)」の4類型に整理する。

■ 変革スペシャリスト
知識・業界の専門性ではなく、「変化をうまく作る」スキルの専門性を磨いたプロフェッショナル。コンセプトを立てて合意形成し、走り出してからは次々に現れる問題を解決していく、複合的な役割を指す。ケンブリッジが自社コンサルタントの目指す姿として掲げる呼称。

■ 変革の4層スキル
ケンブリッジが人材育成で用いる4層構造。下から「心構え」「ビジネス基礎力」(ソフトスキル)、「変革方法論」「PJマネジメント」(ハードスキル)の順に積み上げる。車にたとえると、心構えとビジネス基礎力がエンジン、方法論が道路、プロジェクトマネジメントは速度計や燃料計にあたるメーターであり、エンジンから鍛えることを重視する。

■ 変わる力とブースター
コンサルは顧客の「変わる力」を増幅するブースターであり、0を10にすることはできないが、1や2があればそれを増幅できる、という考え方。コンサルに依存しすぎた組織は変わる力を失うため、ケンブリッジは「お客様をコンサルに依存させない」ことを掲げる。

■ ビジネスアーキテクト
経済産業省・IPAのデジタルスキル標準で定義された人材類型の一つ。ビジネスもITもわかり、両者の間をつないで変革を進める人材を指す。


cambridge

【Intervieweeプロフィール】

榊巻 亮(さかまき りょう)
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 代表取締役社長。大学卒業後、大和ハウス工業で住宅設計と業務改善活動に従事したのち、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに入社。金融・通信・運送など幅広い業界で業務改革、新サービス立ち上げ、人材育成支援を手掛け、2021年6月より現職。一級建築士。著書に『業務改革の教科書』(共著)、『世界で一番やさしい会議の教科書』、『ファシリテーション型業務改革』(共著)、『抵抗勢力との向き合い方』など。

【企業プロフィール・関連リンク】

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社
1997年設立、東京都港区。「顧客と共に考え、共に働き、共に変える」変革共創型コンサルティングを掲げ、組織・業務改革、IT戦略立案、新規事業創造などの変革プロジェクトを、ファシリテーションを軸に立ち上げから成功まで支援する。「一度でもケンブリッジと最後まで仕事をしたお客様なら、次は自分たちで変革できる」ことを目指し、お客様をコンサルに依存させない姿勢を貫く。行動規範として「RIGHT・OPEN・RESPECT」をはじめとする9項目を掲げ、変革方法論をオープンにし続けることを強みとする。変革人材の育成事業として「プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校」を運営し、書籍の出版も多数。

・会社サイト:https://www.ctp.co.jp/
・行動規範:https://www.ctp.co.jp/company/value/
・コンサルの役割4象限(変革共創型)の解説ページ:https://www.ctp.co.jp/company/greeting/
・プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校:https://pages.ctp.co.jp/ctpbootcamp.html
・出版書籍一覧:https://www.ctp.co.jp/book/

本記事はケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社とのタイアップ記事(PR)です。取材・構成は「コンサルのあんなこと、こんなこと」編集部が行い、掲載内容は同社の確認を経ています。

執筆者

大谷内 隆輔
大谷内 隆輔コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。
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執筆者

大谷内 隆輔
大谷内 隆輔コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。

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