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コンサルファームが取り組む「スポーツ案件」事例紹介

コンサルファームが取り組む「スポーツ案件」事例紹介

何故コンサルは収益面のメリットが少ないスポーツクラブ・協会への支援に積極的なのか?

近年、大手コンサルティングファームを中心に、個別のスポーツクラブや競技団体への支援を拡大している傾向にあります。なぜこのような動きが加速しているのか、その背景にある意図や狙いを具体的な事例を交えて解説します。スポーツ業界が直面する課題に関心を持つ方や、将来コンサルタントとしてスポーツ界の問題解決に貢献したいと考えている方は、参考にしていただければ幸いです。

スポーツクラブ・競技団体を対象にしたコンサルティングの種類

スポーツ業界に対する支援というとスポンサーになる等、金銭的な支援を行うことがこれまで一般的でした。しかしコンサルティングファームでは金銭的な援助のみならず、今までで得た知見やノウハウを活かしたコンサルティング支援を実施するケースが増えています。

スポーツ業界に対するコンサルティングは以下の3種類に大別することができます。

最新テクノロジーを活用した、選手・チームのパフォーマンス向上を支援するコンサルティング

こちらはスポーツクラブに対して、AIなどの最新テクノロジーを用いたデータ分析等を実施し、選手個人やチーム全体のパフォーマンス向上を支援するコンサルティングです。近年、スポーツ業界でもデータ活用の重要性が高まっており、IT領域に強みを持つコンサルティングファームが積極的に支援を行っています。

個別チームや競技の認知度向上・収益増を目指すマーケティングを支援するコンサルティング

こちらは、マーケティング戦略の策定やその実行支援を通じて、チームや競技の認知度向上および収益の増加を目指すコンサルティングです。コンサルファームが持つ豊富な専門知識やノウハウを活用し、スポーツ団体の具体的なニーズに応じたカスタマイズされた支援を提供します。

個別チームや競技団体と連携し社会課題の解決を支援するコンサルティング

こちらは、スポーツクラブや競技団体と連携し、スポーツを通じた地域活性化や女性の地位向上など社会課題の解決を支援するコンサルティングです。コンサルファームは戦略的なプランニングや実行支援を行うことで、スポーツが持つ社会的価値を最大限に引き出し、地域や社会全体への貢献を推進しています。

以上三つのテーマの事例について、次章以降でご紹介します。

1.最新テクノロジーを活用した、選手・チームのパフォーマンス向上を支援するコンサルティング

近年、テクノロジーが急速に発展し、スポーツのトレーニング方法や試合の戦略分析、選手のパフォーマンス向上に幅広く活用されるようになりコンサルティングの需要も高まっています。ここでは、イメージが湧きやすい事例を一つ取り上げます。また、その他の事例を一覧形式で紹介します。

♦PwCコンサルティング:AIを活用した川崎フロンターレのスポーツアナリティクス支援
PwCコンサルティングは、株式会社川崎フロンターレ育成部(18歳以下の高校生を担当する部門)に対し、AIを活用したサッカー監督業務の支援を行いました。

監督業務では、限られた時間内で効率的に試合を分析し、効果的な戦略を立てることが求められます。そこで、PwCコンサルティングは試合の分析と戦略立案を支援するAIを開発しました。具体的には、試合動画データと選手に取り付けるGPSセンサーなどの各種センサーデータを組み合わせてAIに活用し、試合全体の把握や重要なシーンの抽出、成功と失敗の要因を詳細に分析することを可能にしました。

出所)PwCコンサルティング

その他の事例

コンサルファーム事例
タタコンサルタンシー
サービシズ         
日本のトップレースであるスーパーフォーミュラに参戦中の、元F1ドライバー中嶋 悟率いるNAKAJIMA RACINGを、タイトルスポンサー兼テクノロジーパートナーとして支援(~2023)
(参照:TCS
アビームコンサルティング本田圭佑氏がプロデュースするソルティーロファミリアサッカースクールに対しコーチの質の維持・向上を目指して、評価システムの構築プロジェクトを実施
(参照:アビームコンサルティング
PwCコンサルティングeスポーツチーム東京ヴェルディに対しAIやデータを利用した分析で選手育成、ゲームの勝率向上、チームワーク強化の支援
(参照:PwCコンサルティング
デロイト トーマツ
コンサルティング
モータースポ―ツの佐藤琢磨選手に対しレースデータや各種走行データを活用して統合的に分析し、競技力向上を目的としたテクニカルサポートを提供
(参照:デロイト トーマツコンサルティング

2.個別チームや競技の認知度向上・収益増を目指すマーケティングを支援するコンサルティング

認知度や収益性の低さはチームや競技団体とって大きな課題となります。コンサルティングファームはそれぞれの課題やニーズを見極め、各チームや団体にとって最適な戦略を打ち出します。ここでも一つの事例を取り上げ、残りの事例は一覧形式で紹介します。

♦ KPMG:スポーツ庁「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向調査」を支援
KPMGは2018年、スポーツ庁から「新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向調査」を受託し、国内外のスポーツビジネスに関する先進事例調査を行いました。

スポーツ庁は、国内スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の充実に再投資することで、持続可能なスポーツ産業の活性化を目指しています。 この調査は、スポーツの成長産業化の柱の一つである「スポーツと他産業との融合」に関する施策を検討するために実施されました。具体的には、スポーツ×ITやスポンサーシップ活用といったテーマを中心に、国内外の先進事例の調査を2か月で完了させました。

基本的なプロジェクトの進め方

膨大な数の調査対象事例からテーマを切り分ける

ホットトピックを絞り込む

出所)KPMG

その他の事例

コンサルファーム事例
スカイライト      コンサルティング    2024年10月よりスタートしたバレーボールの新リーグ、大同生命SV.LEAGUEとパートナー契約を締結。ストラテジックパートナーとして、新規事業開発活動を中心に支援し、長期的な事業成長による産業化を目指す。
(参照:SKYLIGHT
A.T.カーニー J リーグ全体の経営戦略、マーケティング、パートナー、施設運営、海外ビジネスなど、経営およびビジネスの側面から支援
(参照:A.T.カーニー
デロイト トーマツ
コンサルティング
国際オリンピック委員会(IOC)に対しデジタル戦略とトランスフォーメーションを含む、「オリンピック・アジェンダ2020+5」の目標推進に資するコンサルティングサービスを提供
(参照:デロイト トーマツコンサルティング

3.個別チームや競技団体と連携し社会課題の解決を支援するコンサルティング

♦EY Japan:国内プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」と連携し社会課題の解決への取り組みを支援
EY Japanではスポーツ価値循環モデルを掲げ、スポーツ団体や地域コミュニティ、地方自治体、国家と連携することで地方創生や社会課題に取り組む「スポーツビジネス」を展開しています。

出所)EY Japan

その事業の一環として、国内の男子プロバスケットボールリーグであるBリーグと連携した地域活性化の取り組みがあります。Bリーグでは、沖縄アリーナをはじめとする各地域で拠点の整備を進め、スポーツを起点とした経済圏の創出を推進しています。EY Japanは、Bリーグがクラブ、地域コミュニティ、地方自治体、国と連携する際のハブとして機能し、地域社会における価値循環を促進する支援を行っています。

その他の事例

コンサルファーム 事例
KPMG バスケットボールチーム神戸ストークスの地域社会への貢献を目的としたホームタウン活動「ストークスコネスト」を支援
(参照:KPMG
KPMG女子プロサッカーのWEリーグと連携し女性活躍社会の実現を目指し、さまざまなステークホルダーとともに行動を起こす「WE ACTION」を実践を支援
(参照:KPMG
EY Japanバスケットボールチーム長崎ヴェルカデジタルコンテンツの開発や長崎スタジアムシティと連動したICT活用による価値向上の支援
(参照:EY Japan
EY Japanサッカーチーム浦和レッズレディースの有する有形無形の資産・コンテンツを活用や地域社会におけるエコシステムの創出などによる価値創出のコンサルティングサービスを提供
(参照:EY Japan

何故コンサルがスポーツ案件に力を入れ始めたのか

ここまで、カテゴリー毎に代表的な支援事例をご紹介しました。では、これらの支援をコンサルファームが実施する目的はどこにあるのでしょうか?

一般的に、コンサルファームは大企業事業会社や中央官公省庁を顧客とします。一方でスポーツクラブや競技団体などは、コンサルファームに支援を発注できるような予算はないことがほとんどです。つまり、コンサルファームにとって売上面で必ずしも魅力的とは言えないスポーツ団体へのサービス提供を展開していることになります。

結論、これらスポーツ案件支援はコンサルファームにとってのマーケティング、つまりブランディングの要素が強いと推察することができます。メジャースポーツとの連携や話題性が強い事例が多いこともその裏返しでしょう。

さらに、近年ではSDGsや地方創生といった社会的課題への貢献が、企業の社会的責任(CSR)として重要視されるようになっています。スポーツビジネスに注力しているコンサルファームは、大手ファームが大半であり、彼らはSDGs、地方創生への貢献を打ち出しています。地域密着型のスポーツクラブやメジャー競技の支援を通じて、SDGsの達成や地方創生といった社会的課題に取り組むことで、社会的責任を果たすとともに認知度やブランドイメージの向上にも寄与します。

ファームの認知度・ブランドイメージの向上が一番効くのは、やはり人材採用の面でしょう。そして、地域振興やスポーツ振興を通して、支援先の地方自治体へのコンサル案件につながればという副次的な狙いもあるかもしれません。

まとめ

ここまで、コンサルティングファームのスポーツ業界への支援事例を紹介してまいりました。

地域に根差したクラブやメジャースポーツへのコンサルティングサービスは話題性も大きいですが、上述した各社は今後も積極的に取り組んでいくのでしょうか。スポーツビジネスは、地上波での中継が減る一方で、配信やデータ連携などにより事業環境が変化するとともに、DXの進展に伴い今後市場が拡大することが予測されており、コンサルファームの知見やノウハウが活かせる分野となっています。また、今後様々な業界との掛け合わせによって新たな価値を生み出すと予想されますので、引き続き注目していきたい領域です。

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執筆者

K.M.
K.M.コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 コンサルティングカンパニー
平日はコンサル、土日はアメフト選手として活動中。一流なコンサル・アメフト選手になれるよう日々奮闘中。最近の悩みは、パンプアップし過ぎてスーツが着れなくなってきていること。
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