生成AI時代、コンサルジュニアの仕事は「消える」のか「進化」するのか?
コンサルオワコン説は本当?
SNSの投稿などで「コンサルはもうオワコン」と頻繁に見かけるようになりました。生成AIの圧倒的な進化に伴い、これまでコンサルタントが数日かけて心血を注いでいた作業がAIならすぐに終わってしまう、特に手を動かしていたジュニア層を中心にもう不要になるという論理です。
確かに、かつてのアナリストやアソシエイトが修行も兼ねて取り組んでいた業務の多くは、すでにAIに代替されつつあると言えます。しかし、デリバリの現場から見てみると一概にそうも言えないように思えます。
2か月前のコラムでは、AI時代におけるコンサルタントの本質的な価値について触れました。今回はさらに踏み込み、コンサルジュニア層の業務がどう変わり、今後は具体的に何を求められるのかという、より現場に近い観点で考察してみます。
目次
消えた泥臭いプロセス
コンサルティングファームに入社したばかりのジュニア、アナリスト職には、これまで明確な修行のステップが存在しました。
- 徹底的な情報収集: 膨大なニュースリリースや統計データとの格闘。
- 精緻な議事録作成: 発言の行間を読み、構造化しドキュメンテーションする作業。
- 現状分析のベース作り: Excelデータなどから傾向を読み取り、スライドの骨子を作る。
今までは、これらをいかに速く、正確にこなすかがジュニアに求められ、評価観点でもありました。この泥臭いプロセスの積み重ねがコンサルスキルを育むとも言えました。
しかし現在、これらの作業の大部分は、高度な生成AIによって瞬時に、かつ人間を凌駕する精度で完結するようになりました。かつて作業の速さだけでバリューを出していたアナリストは、残念ながらAIに代替されることになります。ただ、これは終わりを意味するわけではなく、作業という名のプロセスが消えただけであり、成果に対する期待値(QCD)の基準が、かつてないほど高次元へとシフトしたと言い換えることができます。
ジュニアに求められる「一段上の思考プロセス」
AIがデフォルトで存在する以上、誰でも引き出せるAIが出す答えをそのまま横流しするだけでは、アナリストとしての価値はゼロとなります。これからのジュニアに求められるのは、単なるワーカーとしての処理能力ではなく、AIのアウトプットをどう評価し、どう解決策に結びつけるかという、かつてはシニアコンサルタントやマネジャーが担っていた思考プロセスに近いものではないでしょうか。
具体的には、以下のような役割が1年目から求められるようになってくると考えられます(書いてて、ハードル高いなと思います)。
- AIアウトプットの妥当性検証
AIが生成した業務フローや市場分析をもっともらしいと鵜呑みにせず、業界特有の商習慣やクライアント現場の力学に照らして、その歪みやリスクを指摘する力。 - 非言語情報の構造化
会議中に感じたクライアントの想い、決裁者とカウンターの担当者間の温度差、現場に漂う変えたくないという抵抗感など、AIが絶対にアクセスできない一次情報を拾い上げ、戦略や実行計画の修正に反映させる人間ならではのセンサー。 - 多角的なリサーチのディレクション
AIを単なる検索代行としてではなく、思考の壁打ち相手として使いこなす力。AIを動かすための問いの質を高めることで、自分一人では到達できなかった深さまで、かつてないスピードで洞察を掘り下げる力。
指示されたことをマルチにこなす時代は終わり、AIを部下のように指揮しながら意思決定に必要な材料を主体的に揃え、複数のタスクを推進する力が求められる時代へと移行しています。
懸念:AIはジュニアの成長を奪うのか拡張するのか
これまで数々の修行、修羅場を乗り越えてきたシニア層のコンサルからすると、ジュニア自身が泥臭く考える前にAIがそれらしい答えを出してしまうことで、若手の思考力が退化してしまうのではないかという懸念があります(古のコンサルからすると、そういうやつはそもそもコンサル向いてないと一蹴して何の懸念も持っていなそうですが)。
確かに、AIのアウトプットを無批判に受け入れるだけでは、思考の試行錯誤は失われ、シンキングタフネスは鍛えられません。効率化することと、考えなくなることがイコールになってしまうようなコンサルタントであれば、AIのアップデートと共に消えていくと思います。
しかし、AIを叩き台として上手く扱うことができる若手コンサルにとっては、AIの台頭と進化は強い味方になります。例えば、なぜAIはこの論点を見落としているのか?、このAIの回答に欠けている、人間臭い力学は何か?というような、AIが出した正論ぽいものの、その先を考える主体性さえあれば、AIはジュニアの成長を数倍速にするチートなツールになるのではないでしょうか。かつてのジュニアがドキュメンテーションに費やしていた膨大な時間は、クライアントの心を動かすための本質的な問いを深める時間に使うことができるのです。
クライアントが求めるコンサルの価値の変化
ジュニアの役割が変わる背景には、クライアント側の変化もあります。今やクライアントの担当者も、手元でAIを動かしています。一般的な市場動向や綺麗なだけのスライドを高い報酬を払ってコンサルに求める必要はないわけです。
クライアントが求めているのは、AIには示唆出しできない自社の内情を汲み取った上での提案と実行ではないでしょうか。この高度な要求に応えるためには、ジュニアであっても、早い段階からビジネス全体を俯瞰する視座を持たざるを得なくなっていきます。
結論:AI以下のワーカーだけがオワコンになる
コンサル業界そのものがオワコンなのではないと思います。AI以下の価値しか出せない、作業員としてのアナリストだけは、オワコンになっていくのではないでしょうか。
昔から若手に対して「バリュー出てる?」と問うことがよくありますが、現在は作業ではバリューを出すことはできず、1年目であっても自分にしか出せない洞察はあるか?何がバリューになるのか?という問いを、AIを通じて突きつけられる過酷な時代です。しかしそれは、裏を返せば、若いうちから作業をAIに丸投げし、人間ならではの高度な意思決定や対人スキルのトレーニングに没頭できるチャンスでもあります。AIという相棒を使い倒し、作業の壁を越え、より人間らしく、よりクリエイティブなプロフェッショナルを目指すことがAI時代のジュニアコンサルの唯一の方向性ではないでしょうか。
[v358]
執筆者

- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 コンサルキャリアカンパニー
-
外資自動車メーカー2社を経験した後、コダワリにジョイン。
コンサルティングワークもこなす傍ら、人材紹介事業の事業責任者やコダワリの人材開発業務や採用統括業務など含めて幅広に従事。
執筆者

- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 コンサルキャリアカンパニー
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外資自動車メーカー2社を経験した後、コダワリにジョイン。
コンサルティングワークもこなす傍ら、人材紹介事業の事業責任者やコダワリの人材開発業務や採用統括業務など含めて幅広に従事。



















