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大量解雇の波は日本のコンサル業界にも及ぶのか? ~後編~ | アクセンチュア1.9万人人員削減でいよいよ波及?
マスコミをにぎわすアクセンチュアやKPMG・McKの解雇について整理し、今後の動向を占いました
いわゆるGAFAを始めとする米巨大テック企業で数万人の大量解雇が連発されたことは記憶に新しいと思いますが、先日、ついに世界最大のコンサルファーム アクセンチュア社でも、1.9万人の解雇が発表されました。BIG4の一角であるKPMG、コンサルの象徴ともいうべきマッキンゼーでも、それぞれ700人、2,000人の削減が発表されています。コンサルとテックは、IT化、DX、自動化の文脈では「お隣さん」のような関係です。コンサル業界もついに、大量解雇の波に飲まれてしまうのでしょうか?
目次
前回記事で占ったことが現実に?
実は私、1か月前にもこのテーマで記事を書かせていただいておりました。
「そもそもなぜ米巨大テックが大量解雇しなければならない事態に陥ったのか?」
「コンサル業界にも影響がありそうなのか?」
「影響があるとしたら、どのファームから影響が出始めそうなのか?」
をギュッと書かせていただいたので、興味のある方はぜひ、読んでみてください!
サクッと結論だけ再掲しますと、
- コンサルもテックも、IT化、DX、自動化の文脈では近接、類似業種
- コロナ禍を受けた未曾有のテックブームを背景に人を採り過ぎ、急拡大した点も完全一致
- 急速に訪れたアフターコロナによるテックブームの終焉、ウクライナ問題やそれによるハイパーインフレーションを受けた急激な金融引き締めによる市場環境の悪化のダブルパンチを受けた点も同じ
- もっとも影響を受けやすいのは、米国を本国とするグローバルファーム。先ずは本国でのレイオフから始まり、日本法人もその波をかぶる格好になるはず
- BIG4+アクセンチュアの採用スタンスが厳しくなる可能性を示唆
というまとめでした。
そういった背景もあり、正直、アクセンチュア社の大量解雇の記事を見た瞬間は、「いよいよか・・・」と息をのみました。本稿では、飛び交っているニュースをまとめるとともに、今後の動向について考察してみたいと思います。
結論から言うと「“コンサルタント”は、まだ大丈夫」
先にオチを申し上げると、「“コンサルタント”は、まだ大丈夫」です。
センセーショナルに語られてはいますが、いずれのファームも削減対象は、顧客と対面しないようなバックオフィス(コーポレート、間接部門、本社部門、とも呼ばれます)のスタッフたちです。経理や管理事務をしてくれているサポートスタッフの方々、ということですね。
こうした人たちはどんな業種にも必須ですが、特に、コンサルファームは、時給の高いコンサルタントをできるだけコンサル業務に集中させ、高いバリューを出させるために、バックオフィスに相応の人員を張ってきました。
私の経験則ですが、コンサル100人につき、10人くらいのサポートスタッフがいるイメージです。アクセンチュア社ですと、80万人規模となるため、単純計算すると約8万人がサポートスタッフといえるでしょう。その1.9万人なので「サポートスタッフの10人に2-3人が解雇される」というインパクトです。
ただし、80万人のうちBPO部隊や開発部隊の人員の方が多いことを考えると、コンサルタントのサポートスタッフはもう少し少ないかもしれません。その場合、サポートスタッフが受けるインパクトはより大きいものとなります。
なぜ「バックオフィス」?
なぜ解雇の波は、単価の高いコンサルタントではなく、バックオフィスのサポートスタッフから始まったのでしょうか?
結論から言うと、理由は以下2点あると思います。
- コンサル業界もDX化が進んでおり、従来のような「人手」による手厚いサポートがいらなくなった。
- コンサルは”逆風は逆風で稼げるビジネス”なので、ここで「コンサル」を大量解雇して、今後の採用を苦しくしたくない。(レピュテーションリスクがある)
上記1は比較的分かりやすいのではないでしょうか。
コンサル業界もDX化が進み、Microsoft office 365が完全に一般化しました。Teams、Outlookなどが浸透し、何かあればすぐにチャット、WordもExcelもPPTも複数人で分担しながら同時編集、声を掛けたければTeamsでコールすればOK、という世界になりました。
以前は当たり前に存在していた社内のオリジナルメールシステムは消え失せ、人手による会議室の確保、秘書の方々によるパートナー陣のスケジュール管理、などといった業務は少なくなってきたのではないでしょうか。
クライアントへの最終報告書を山のようにコピーし、クライアントのオフィスに郵送したり、社内で回覧したり、丁重にドッジファイルにとじ込んで倉庫に保管、などという作業もなくなり、Teamsの共有フォルダをそのままSharePointで共有、保存するだけで、納品、記録業務が完結するようになりました。クライアントとの契約書も電子化が進んでおり同様です。
こうした世界がやってきた時、仕事が無くなるのはコンサルタントではなく、そのお手伝いをしてくれていたバックオフィスの事務の方々や、社内独自ITツールの運用保守をしてくれていたSEの方々です。
コンサルの手も空いたことは空いたのですが、そもそも売り手市場で慢性的な人手不足、需要超過産業なので、「空いた手はどこかに回せばいい」「手はいくらあっても足りない」状態で現場は何ら困らないわけです。
2はちょっと大人の事情ですが、コロナ禍やリーマンショックのときも、コンサルタント自体は“相対的に”安全なお仕事でした。
もちろん、クライアント側の検討や、ビジネス、コンサル案件の発注がストップすることにより、案件が一次的に凍結になったり、予定されていたプロジェクトが見送りになったりで、一次的にアベイラブルが増えたりなどはありながらも、一過性のものだったと思います。
他業種で倒産、大規模リストラが相次いだことに比べれば「相対的に軽傷だった」といっても過言ではないでしょう。
※なお、これはBIG4級の大手ファームを前提にしています。小規模ブティックコンサルなどはかなり大変だった、という声も聴きますし、今やBIG4に肩を並べる某日系ファームも、内定切りなどでかなり叩かれた黒歴史があります。
興味のある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
ではなぜ、コンサルビジネスは不況に強いのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。
そもそも、「未曾有のパンデミック」や「100年に1度の危機」が訪れた時、事業会社の方々はそれに対応できるでしょうか?100人普通のビジネスパーソンがいたとして、何人が組織の大変革や、大幅なリストラ、新規ビジネスへの転換、倒れそうな事業の立て直し、構造改革を経験してきたでしょうか?
・・・そうです。恐らく、かなり限定的だと思います。
その分、コンサルタントにとって「ピンチはチャンス」となります。
コンサルは、事業会社の方々が、10年、20年務める中で、1回経験できればラッキーなような大変革案件にデイリーで携われるジェットコースターのようなお仕事です。
人の不幸を喜ぶわけではないのですが、「クライアントが困っている時こそバリューが出せる」というのがコンサルの存在意義なわけなので、当然と言えば当然です。
だからこそアクセンチュア社も、先々の成長、すなわち、更なるコンサル人員の拡大を見据えて、単価が高いコンサルは切らず、バックオフィスから手を付けたわけです。
不況などどこ吹く風~単価アップと強気の採用スタンス
主に大手ファームでの話となりますが、相次いでコンサルフィーを値上げしてきていると聞きます。数十万円/月程度ではなく、、百万円/月単位の上げ幅もあるようです。
採用の方も、引き締め、慎重スタンスにはなっていますが、某日系ファームでは「4月から新卒が500人入ってくる」と、総務部がてんやわんやしていると聞きます。
コロナも収束してきて、転職市場も活発になり、中途採用にも力が入っています。リモートでの面接に最適化し、従来のホワイトボードディスカッションを中心とした「超精緻なフェルミを神速で行う」タイプの面接から、ホワイトボードがないweb面接でも頭の良さが分かる「抽象的なケースでビジネスセンスや発想力、構造的な思考法を試す」面接にシフトしてきました。
優秀な人材を、1人でも多く確保したいファームの創意工夫が見て取れます。
私の周りでも、落ちた人は「採用スタンスが厳しくなってきている」と嘆いていますが、対策をきちんとして、自信をもって臨んだ方々はアクセンチュア社からもBIG4からもバンバンオファーをいただいていますし、優秀なコンサルタントは引っ張りだこですので、ファーム間での「移籍」や、一度他のファームにいったコンサルタントが帰ってくる「出戻り」も依然珍しくありません。
とはいえ深刻化する「人的負債」問題とコンサルファームの対処法
とはいえ、そんなコンサル業界も先行きバラ色、というわけではありません。
前回記事で巨大テックが嘆いていたように、大量採用には「ハズレくじ」がつきものです。
ホワイト化やコンプラ強化により、「優しいコンサル」「丁寧に教えます」が流行るようになったせいもあるのでしょうか、成長しない新人、未経験中途、リモートをいいことにサボる中堅コンサルタントが増えてきた、という嘆きをマネージャークラスの口からよく聞くようになりました。
「コンサルタントがサラリーマン化している」「もう昔のようなギラギラした世界ではなくなった」というシニア層の愚痴を聞かない夜はありません。
そんな「人的負債」に対するコンサルファームの対応策は一択で、「サラリーマン化した人員はサラリーマンとして使う」です。
「社員代替」などと揶揄されますが、事業会社の社員でもできるような、コンサルらしくない事務作業や、集計作業、雑務関係を任せて手を満たし、チャージをつけるのが一般的です。
こういった「社員代替」案件ですが、昔は、「せっかくコンサルになったのに、普通のサラリーマンみたいな仕事しかさせてもらえない!」と落胆されるようなものが、最近の若手メンバーは「思ったより楽でよかった」のような受け止め方をする人も多いように感じます。
成長機会も、気づきのチャンスも限定的となってしまうため、少々もったいない感もありますが、ファーム側からすれば、1人でも多くのコンサルタントをチャージ化し、売り上げを建てたいと考えているはずなので、「いいからそこに座ってて」といった位置付けのお仕事になります。
こうした、コンサルなのにコンサルらしくない「滞留人材」「低付加価値人材」になってしまうと、いわゆる”カッコいい戦略案件”へのアサインなど夢のまた夢になってしまい、成長したくても成長機会がないので、気づいたら時間だけが経っていた、ということになりかねません。
「切られない」からこそ、積極性と一歩前に踏み出す勇気を
この負の連鎖に一度入ってしまうと、自力で抜け出すのは至難の業です。
「切られない」からこそ、「やさしく」「丁寧に」されるからこそ、前のめりで仕事に取組み、耳が痛いことも含めて積極的にフィードバックをお願いし、自分の成長を追い求めることが肝心です。
それでも、「なんかそういうサイクルに入ってしまったかも…」と思い始めたら、思い切ってファームを移ってみるのも手です。P社でうまくいかなかった方が、A社やD社で輝いている、という話は珍しくもありません。
心機一転、新天地で活躍しましょう。
本メディアを運営する、コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社では、「コンサルタントによるコンサルタントのための」キャリアアドバイスや、転職相談を受け付けています。
転職を検討されている方はもちろん、今の環境や案件に悩まれている方からのご相談も歓迎ですので、お気軽にお問合せください!
なお、今回の大規模解雇の背景をさらに詳しく知りたい方は「図解即戦力 コンサルティング業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」をぜひお読みください。
話題のアクセンチュアは業界でどのような立ち位置なのか、Big4やMBBなどその他の主要コンサルティングファームにはどのような特徴があるのかなどを分かりやすく解説するほか、コンサルティング業界の市場規模や動向、コンサルタントのキャリアパスなど、コンサル業界にまつわるあらゆる情報を網羅的に明示しております。
当記事をまとめると、以下となります。
- コンサルファームもリストラとは無縁ではないが、今後の採用も考えると、ファームにとって、“コンサルタント”の大量解雇は難しい
- 「切られない」代わりに、コンサルタントに待っているダウンサイドシナリオは、「社員代替案件」での滞留とそれによるキャリア / 自己成長の停滞
- こうした「負の連鎖」に陥る前に、一歩を踏み出しましょう
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執筆者
- 新卒で外資系コンサルティングファームに入社。以来、現在まで一貫してHR領域のコンサルタント、リサーチャーとして活動。2022年に独立。趣味は筋トレとカリンバ。
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